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ヨーロッパ連合(EU)が発足するのイラスト
高校/政治
1993

ヨーロッパ連合(EU)が発足する

EC加盟各国(マーストリヒト条約)
語呂
覚え方
行く草の根(いくくさ)(1993)EU発足
いくくさ(1993)EU発足

1993年11月、前年1992年にオランダのマーストリヒトで調印された「マーストリヒト条約」が発効し、それまでのEC(ヨーロッパ共同体)を母体として、ヨーロッパ連合(EU)が正式に発足しました。EUはモノ・サービス・ヒト・カネが国境を越えて自由に行き来できる単一市場をさらに発展させ、共通の外交・安全保障政策と司法・内務協力、さらには単一通貨(ユーロ)導入を目指す、経済統合を超えた政治的統合体です。その後加盟国は12か国から28か国(ブレグジット後は27か国)へと拡大し、21世紀の国際秩序においてアメリカ・中国と並ぶ大きな経済・政治ブロックとなっています。

この記事のポイント

  • 1993年11月、マーストリヒト条約の発効によりEC(ヨーロッパ共同体)がEU(ヨーロッパ連合)へ移行した
  • EUは経済統合(単一市場)に加え、共通外交・安全保障政策、司法・内務協力という新たな柱を持つ
  • 単一通貨ユーロは1999年に導入され、2002年から紙幣・硬貨として流通を開始した
  • 背景には二度の世界大戦の反省と、冷戦終結・ドイツ統一後の新しいヨーロッパ秩序づくりがある
  • EUは加盟国拡大と深化を続ける一方、各国の主権との調整や経済格差など多くの課題も抱えている
ここが面白い

「ヨーロッパは一つの国ではないけれど、みんなで一つの未来をつくる」――二度の世界大戦を経たヨーロッパ諸国が、国境を越えた統合体「EU」を生み出した1993年の出来事。

ここに至るまでの流れ
背景

EUは突然生まれたわけではありません。第二次世界大戦の反省からはじまった40年以上にわたる統合の歩みの結実です。その流れを順に見ていきましょう。

シューマン・プランからECSCへ(1950〜1952年)

1950年、フランス外相ロベール・シューマンは、石炭と鉄鋼の生産を共同管理することでフランスとドイツの戦争を不可能にしようと提案しました(シューマン・プラン)。これを受けてフランス・西ドイツ・イタリア・ベルギー・オランダ・ルクセンブルクの6か国が1952年にECSC(ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体)を発足させました。戦争の道具である鉄鋼を共同管理することで、国家間の対立を経済協力に転換するという発想です。

EECからECへ(1958〜1967年)

1958年、同じ6か国がローマ条約を結び、関税を撤廃して自由貿易圏を目指すEEC(ヨーロッパ経済共同体)と、原子力の共同開発を目的とするEURATOM(ヨーロッパ原子力共同体)を設立しました。1967年にはECSC・EEC・EURATOMの三機関が統合されてEC(ヨーロッパ共同体)となり、加盟国も徐々に増加。1987年には単一欧州議定書が発効し、1992年までに国境を越えたモノ・サービス・ヒト・カネの自由移動を実現する「単一市場」の完成が目標として掲げられました。

冷戦終結・ドイツ統一とマーストリヒト条約(1989〜1992年)

1989年のベルリンの壁崩壊・冷戦終結と1990年のドイツ統一は、ヨーロッパの地政学を大きく変えました。統一ドイツが巨大化することへの懸念から、フランスのミッテラン大統領とドイツのコール首相は「ドイツをより深い統合の中に埋め込む」方針で合意。1992年2月、オランダのマーストリヒトでマーストリヒト条約(EU条約)が調印されました。この条約は経済統合だけでなく、共通外交・安全保障政策と司法・内務協力という二つの新しい柱を加え、通貨統合(ユーロ)への道筋も定めました。

EU発足後の展開(1993年以降)

1993年11月に条約が発効し、ECはEUとなりました。その後、単一通貨ユーロが1999年に電子決済形式で導入され、2002年から紙幣・硬貨として実際に流通を開始します。加盟国も冷戦後の東欧諸国を含めて拡大し、2004年にはポーランドなど10か国が一度に加盟(EU最大の拡大)。一方でギリシャ財政危機(2010年代)や英国の離脱(ブレグジット、2020年正式離脱)など、統合の深化と各国の主権・利益のバランスをめぐる緊張も続いています。

やったこと(≒ 現代でいうと)
何を

単一市場の完成と深化

≒ ヨーロッパ内では「事実上一つの国」のように人・モノ・カネが動く

ECの時代に進めてきた関税撤廃・自由貿易をさらに発展させ、人の移動の自由(就労・居住)も含めた本格的な単一市場を実現。EU市民はパスポートなしで加盟国間を移動できる(シェンゲン協定)ようになった。

共通外交・安全保障政策(CFSP)の創設

≒ 加盟国が外交・防衛でも共同歩調をとる仕組み

それまでの経済統合中心のECに加え、EU加盟国が外交・安全保障の分野でも共通の立場をとれる枠組みを設けた。NATOとは別に、ヨーロッパとしての発言力を高めることが狙い。

ユーロ導入による通貨統合

≒ 複数の国が一つの通貨を使う、世界史上例のない実験

マーストリヒト条約は単一通貨ユーロの導入を定め、1999年に電子通貨として導入、2002年から紙幣・硬貨が流通開始。為替リスクがなくなり貿易や旅行が便利になった一方、各国が独自の金融政策をとれなくなるという課題も生んだ。

前後のできごと
年表
1950
シューマン・プラン発表フランス外相シューマンが石炭・鉄鋼の共同管理を提案。ヨーロッパ統合の原点。
1952
ECSC発足フランス・西ドイツ・イタリア・ベネルクス3か国の6か国でヨーロッパ石炭鉄鋼共同体が発足。
1958
EEC・EURATOM発足ローマ条約に基づき、ヨーロッパ経済共同体とヨーロッパ原子力共同体が発足。
1967
EC発足ECSC・EEC・EURATOMが統合されてEC(ヨーロッパ共同体)となる。
1989
ベルリンの壁崩壊・冷戦終結東欧革命が連鎖し、ベルリンの壁が崩壊。冷戦終結が確実になり、ヨーロッパの地図が書き換えられる。
1990
ドイツ統一東西ドイツが統一。統一ドイツの台頭を踏まえ、フランス・ドイツがより深い統合で合意。
1992
マーストリヒト条約調印2月、オランダのマーストリヒトでEU条約に調印。経済統合に加え共通外交・通貨統合への道筋を定める。
1993
EU発足11月、マーストリヒト条約が発効し、ECからEU(ヨーロッパ連合)に移行。加盟国は12か国。
1999
ユーロ導入(電子通貨)単一通貨ユーロが電子決済の形式で導入される。紙幣・硬貨は未流通。
2002
ユーロ紙幣・硬貨の流通開始1月1日からユーロの紙幣・硬貨が実際に使われ始める。参加国ではそれまでの自国通貨が廃止された。
結果とその後
結果
ヨーロッパは単一市場・共通通貨・共通外交という三つの柱を持つ世界最大規模の政治経済統合体となった。加盟国間の戦争は事実上なくなり、EU全体でアメリカに匹敵するGDPを持つ経済圏が実現した。EUとその前身組織の功績は高く評価され、2012年にはEUがノーベル平和賞を受賞している。
各国が通貨主権・財政主権・外交主権の一部をEUに委ねる統合の深化は、国家主権との緊張を生み続けている。2010年代のギリシャ財政危機ではユーロ圏の構造的弱点が露呈し、2020年には英国がEUを離脱(ブレグジット)した。加盟国間の経済格差や移民・難民問題も続く課題であり、統合の便益とコストをめぐる議論はEU加盟国内で現在も続いている。
登場人物
人物

ロベール・シューマン

フランス外相(ヨーロッパ統合の父の一人)

1950年のシューマン・プランを提唱し、ECSCの設立を主導した。ヨーロッパ統合の精神的な原点を作った人物とされ、5月9日の「ヨーロッパ・デー」はこの提案の日にちなむ。

ヘルムート・コール

西ドイツ・統一ドイツ首相(在任1982〜1998年)

ドイツ統一を実現しつつ、フランスとともにマーストリヒト条約の締結を推進した。統一ドイツをEUという枠組みに埋め込むことでヨーロッパの安定を図った。

フランソワ・ミッテラン

フランス大統領(在任1981〜1995年)

ドイツ統一に際して、ドイツをより深いEU統合の中に位置づけることを条件に支持した。コール首相とともにマーストリヒト条約の推進力となった。

ジャック・ドロール

EC委員会委員長(在任1985〜1995年)

単一欧州議定書(1987年)の推進や単一市場の完成、さらにマーストリヒト条約の内容設計に中心的な役割を果たした。ユーロ導入の設計者の一人でもある。

キーワード解説
用語
マーストリヒト条約
1992年2月にオランダのマーストリヒトで調印され、1993年11月に発効した条約。ECをEUへ移行させ、共通外交・安全保障政策、司法・内務協力、通貨統合(ユーロ)への道筋を定めた。正式名称は「ヨーロッパ連合に関する条約(EU条約)」。
EC(ヨーロッパ共同体)
1967年にECSC・EEC・EURATOMが統合されて発足した組織。単一市場の形成を中心に据えた経済統合体で、EUの前身。マーストリヒト条約の発効により1993年にEUへと発展的に解消した。
単一市場
EU域内でモノ・サービス・ヒト・カネの四つの自由移動が保障される経済圏。関税や数量制限がなく、EU市民はどの加盟国でも就労・居住できる。1993年に完成宣言がなされた。
ユーロ(euro)
EU加盟国の多くが採用する単一通貨。1999年に電子通貨として導入され、2002年から紙幣・硬貨が流通開始。2024年現在、ユーロを採用する国(ユーロ圏)は20か国に達している。
シェンゲン協定
1985年に調印されたヨーロッパ内の国境検査廃止に関する協定。EU加盟国の多くが参加しており、加盟国間の移動にパスポート提示が不要となっている。ただしEU加盟国であっても未参加の国も存在する。
もっと知りたい
豆知識

1「マーストリヒト」はオランダの小都市

EU発足の原点となったマーストリヒト条約の名前は、オランダ南部の都市マーストリヒトに由来する。人口約12万人のこの都市は、1992年の条約調印で一躍ヨーロッパ史に名を刻んだ。市内にはEU発足を記念するモニュメントが設けられている。

2EUはノーベル平和賞を受賞している

2012年、ノーベル委員会はEUに対してノーベル平和賞を授与した。授賞理由は「60年以上にわたりヨーロッパの平和・和解・民主主義・人権の発展に貢献した」こと。かつて戦争を繰り返した国々が共同体を作り上げたことへの評価である。

3ユーロ硬貨の表はどの国も同じ、裏は国ごとに違う

ユーロ硬貨は表面(額面を示す側)のデザインはすべての国で統一されているが、裏面は各国が独自のデザインを採用できる。たとえばドイツはブランデンブルク門、フランスはマリアンヌ像、ギリシャはフクロウなど、国の個性が硬貨の裏に反映されている。

4英国はEUに加盟したが離脱した唯一の国

英国は1973年にECに加盟したが、2016年の国民投票でEU離脱(ブレグジット)を選択し、2020年1月に正式離脱した。EUから離脱した国は英国が初めてであり、加盟国数が減ったのもこれが唯一の例である。

5EUの旗の星は加盟国数と関係ない

EUの旗に描かれた12の金色の星は加盟国の数を表しているわけではない。12という数字はヨーロッパの伝統的な完全・調和を象徴する数として採用された。そのため加盟国が増えても減っても星の数は変わらず、常に12のままである。

世界史の博士
ここが出る博士のワンポイント
年号は1993年。語呂は「行く草の根(いくくさ)(1993)EU発足」。
EU発足の根拠となった条約はマーストリヒト条約(1992年調印・1993年発効)。調印と発効の年が異なる点に注意。
EUの前身の変遷:ECSC(1952年)→EEC・EURATOM(1958年)→EC(1967年)→EU(1993年)の流れをおさえる。
EUの三本柱:①単一市場(経済統合)、②共通外交・安全保障政策(CFSP)、③司法・内務協力。ECとの最大の違いは②③が加わった点。
ユーロの導入は1999年(電子通貨)・2002年(紙幣・硬貨流通開始)。EU発足(1993年)と混同しないこと。
語呂クイズ
「行く草の根(いくくさ)(1993)EU発足」= ヨーロッパ連合(EU)が発足するは西暦何年?
よくある質問
FAQ
Q. EUとECは何が違うのですか?
A. EC(ヨーロッパ共同体)は主に経済統合を目的とした組織でしたが、EU(ヨーロッパ連合)はそれに加えて共通の外交・安全保障政策と司法・内務協力という柱が追加され、政治的な統合を目指すより広い組織です。EUはECの後継として1993年に発足しました。
Q. なぜ1993年にEUが発足したのですか?
A. 1989年の冷戦終結と1990年のドイツ統一を受けて、新しいヨーロッパ秩序を政治的な枠組みで固める必要性が高まったためです。1992年にマーストリヒト条約が調印され、翌1993年に発効してEUが誕生しました。
Q. ユーロはいつから使われるようになったのですか?
A. ユーロは1999年に電子通貨(銀行間取引や電子決済)として導入されました。実際に紙幣・硬貨として人々が使えるようになったのは2002年からです。EU発足(1993年)とは時期が異なるので注意しましょう。
Q. EUに加盟すると何かいいことがあるのですか?
A. 加盟国間では関税なしに貿易ができ、EU市民はどの加盟国でも自由に就労・居住できます。ユーロ採用国では為替の手間がなくなり、安全保障や外交で共同の発言力を持てるなどの利点があります。ただし、財政・金融政策の一部をEUに委ねるという制約も伴います。
Q. EUには何か問題点はないのですか?
A. あります。加盟国間の経済格差(豊かな北西欧と相対的に貧しい南・東欧)、各国の主権とEUの決定権のバランス、移民・難民問題への対応の違いなどが主な課題です。英国は2020年にEUを離脱しており、統合のあり方をめぐる議論は現在も続いています。
まとめ

1993年のEU発足は、二度の世界大戦の反省から始まった40年以上にわたるヨーロッパ統合の到達点でした。かつて戦場だった国々が、今や共通の通貨・パスポートなしの国境越え・共通外交を持つ一つの共同体を作り上げたことは、世界史における画期的な出来事です。「行く草の根(いくくさ)(1993)EU発足」という語呂とともに、ECからEUへの移行とマーストリヒト条約の内容、そしてユーロ導入の流れをしっかり整理しておきましょう。

編集メモ(ファクト)
EU発足の正確な日付は1993年11月1日(マーストリヒト条約の発効日)。
「加盟国12か国」はEU発足時の数。その後拡大を重ね、最大時28か国、ブレグジット後は27か国。
ユーロ採用国(ユーロ圏)はEU加盟国の一部であり、すべての加盟国が採用しているわけではない(デンマーク・スウェーデンなど非採用国が存在)。
シェンゲン協定はEUとは別の枠組みだが関連が深いため用語で説明を加えた。
relatedは指定された 1989-end-cold-war・1990-german-reunification の2つのみ記載。