「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

K唐代芸術の近代性と、純粋芸術の成立-書、山水画 等 K唐代芸術の近代性と、純粋芸術の成立-書、山水画 等

芸術作品に作者の名が冠せられる、中国文化の先進性

 唐代の中国では、杜甫、李白、白居易らが、独創的なを残し、また呉道玄の山水画、顔真卿のなども名声を博した。

 

K唐代芸術の近代性と、純粋芸術の成立-書、山水画 等
山水画
借用元 http://www.geocities.jp/themusasi5/a104.html

 

K唐代芸術の近代性と、純粋芸術の成立-書、山水画 等
顔真卿の書
借用元 http://www.robundo.com/robundo/column/?p=3063

 

ここで着目すべきは、作品に作者名が付随するという中国文化の先進性である。

 

 これはどういうことかと言えば、たとえば同時代のヨーロッパにも、芸術作品はいちおうは存在した。

 

 たとえばビザンツ帝国で造られたイコンやモザイク、あるいはヨーロッパの教会で崇拝の対象となった、キリストや聖母マリアの像などである。

 

 しかしこれらの作品は、“宗教性”からは一歩も外に出ない。

 

 したがって、その作者が問題となることもない

 

 なぜなら、作品はすべて共同体のものでありその製作目的は「民衆の教化」にしかなかったからである。

 

 つまりこの時代のヨーロッパには、いまだ「個人」という観念がなかったのだ。

 

 あらゆる人間はキリスト教会という共同体に埋没しており個人”がそこからはみ出すことなど、考えられなかったのである。

 

 このことは、のページにおける、“「善=道徳観念」により、人の育成がなされた時代、〈中世〉”の章で述べたとおりである。

 

 当時のヨーロッパは、いまだ“少年期”のまっただ中にあったのだ。

 

 “少年”が家を出て自立することがあり得ないように、その時代のヨーロッパ人とは〈キリスト教会〉という庇護者から離れることは、考えられなかったのである。

 

 ヨーロッパにおいて、芸術作品の作者が問われるようになったのは、ようやく 14 世紀から始まるルネサンス〉以後である。

 

 さらに同時代のイスラム教国も、同様である。

 

7 〜 8 世紀はイスラム教が勃興して、間もない時期であった。

 

 その時期には、たしかにモスクドームなどの高度で華麗な建築物は存在したが、それをだれが設計し、造ったかということはまったく問われない

 

 そうした時代にあり唐では、すでに宗教を離れた鑑賞のための芸術が存在し、かつ、その作者が名声を得るということがあったのだ。

 

 この点は、「J.六朝文化の特徴と先進性」のページにおける、「六朝文化の革新性と、成立理由」の章で述べたとおりである。

 

 中国という国は、漢という統一国家ができる前の、 いまから2,000 年以上前にすでに〈近代〉が成立していたのだ

 

 よって、中国はその時代にはすでに〈近代文化〉を生んでいた。

 

 たとえば、早くも漢代に成立していた〈訓詁学〉などは、それに該当する。

 

 ところが中国という国の可能性は、それまでである。

 

 中国では他地域における〈中世〉のような宗教時代をもたないため文明・文化の進展が、2,000 年前で止まっているのだ。

 

 というのは、たとえばヨーロッパでは「暗黒の中世」とは、それを振り払うことにより、〈近代〉を実現させるという作用をなした。

 

 しかし中国は、気づいたときにはすでに〈近代〉が現実化していたのでそこからさらに発展しようがないのである。

〈視覚芸術〉の存在がもつ意味

 また唐代の中国では、山水画といった〈視覚芸術〉が発達した。

 

 このことは、何を意味するのであろうか?

 

 ここもやはり、中国という国がもつ〈近代性〉の表れである。

 

 ご面倒だが、この点は、「@少年期の文化である、西洋中世文化」のページにおける、「“聴覚”の時代、〈中世〉」の章を参考にしていただきたい。

 

 一般に人間の少年期とは、教育にあたり“聴覚”が最重要なものである。

 

 なぜなら少年とは、「人の話を聴く」ことにより、教化されていくからである。

 

 その意味で、「少年の時代=中世」を支配したイスラム教では、『コーラン』の傾聴や音読が重視された。

 

 また、同時代のヨーロッパでも同様である。

 

 キリスト教信徒である民衆にとって大切なことは、神父や教父の説教をだまって受け入れることであった。

 

 さらに西洋においては、はじめて「宗教=キリスト教」から離れて生まれた文化は、〈吟遊詩人〉による詩の朗読である。

 

 それほどまでに、「人類の少年期=中世」においては、“聴覚”が意味をもった。

 

 なぜなら聴覚”とは感覚的な器官であるため、「自分で考える力=理性」を、まだもたない少年にとっては、最重要な感性だからである。

 

 ところがそれに反し“視覚”とは、じつに「理性的な」感官である。

 

 基本的に書物は、“”により読まれ、また読者は「眼から入った情報」を、「自分のアタマで判断する」からである。

 

 そうしたわけでヨーロッパでは、「理性の時代」である〈近代〉に入り、多くの書物や、彫刻、絵画などの視覚芸術が生まれることとなる。

 

 それも、「宗教=キリスト教」からは、あるときは相対的に、またあるときは絶対的に独立したかたちで、である。

 

 この点で述べれば、中世の時点で高度な視覚芸術を、いくつも生み出した中国の〈近代性〉は、ここでも見出だせる。

 

 唐代の人間は書や山水画を宗教から離れた、純粋な鑑賞物として創作したのである。

 

 ところがここでもまた、中国文化の限界も同様に見て取れる。

 

 なぜなら中国は、これより後代になり、唐代の文化より質的に上回る文物を、“文治主義”であった宋の時代をのぞくと、あまり生んでいないからである。

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管理人 水無川 流也