「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

K唐代文化 -仏教、道教、儒教に見る、中世的大教団の成立 K唐代文化 -仏教、道教、儒教に見る、中世的大教団の成立

仏教伝来が意味するもの

 唐とは、多彩な異文化が混合した、“国際性”により成り立った国だということは、これまでのページで述べてきた。

 

 そこから当然に、唐の時代に栄えた文化とは、国際性が豊かなものである。

 

 だがこのことは、ひとり唐にのみ当てはまることではない。

 

 唐代文化が興った時代は世界各地で共時的に多様な民族たちを統治するイデオロギーが確立されたのである。

 

 それこそまさに、いわゆる「世界三大宗教」の成立であった。

 

 まず唐では、7 世紀に玄奘や義浄といった僧がインドから仏典をもち帰り、また貴族たちの保護を受け、教団としての仏教は成長していった。

 

K唐代文化 -仏教、道教、儒教に見る、中世的大教団の成立
玄奘

 

 唐の国家宗教は道教であったが、その後、仏教は浄土宗禅宗など多彩な宗派を生み、後の中国では道教を超えて国家イデオロギーとなっていった。

 

 ところで「世界三大宗教」とは、仏教の他にキリスト教イスラム教を指す。

 

 ところがまずイスラム教であるが、ムハマンドがイスラム教の布教を始めたのは610 年ごろからである。

 

 ここからイスラム教が広がっていき、イスラム教の帝国が西アジアに生まれたのは、玄奘や義浄の活躍した時代とピタリと合致する

 

 くわえてキリスト教だが、こちらも 7 世紀とはちょうど、ローマ教会がヨーロッパのゲルマン人たちに熱心に布教を開始したのと同時期である。

 

 これは、「K大唐帝国の成立と、その世界史的意義」のページにおける、「ユーラシア大陸が、〈中世的国家〉でつながった」の章でも述べた。

 

 まず「中世のナショナリズム」とは、“一国”ではなく“一地域”を、また“国民”ではなく“領邦民”を重視する思想である。

 

 その意味では、仏教、イスラム教、キリスト教はみな「信者の平等」を説く思想であるから、すべて「中世の最盛期」に教団が成立したことは、偶然ではない

 

 それぞれの宗教が、多様な民族が共生する、広大な地域をまとめる必要性から、登場したのである。

 

 

中世的ナショナリズム

 唐では、漢字の原義を研究する〈訓詁学〉が、漢代以来、見直された。

 

また魏晋南北朝時代には軽視されていた儒教も、国家イデオロギーとして再評価されることとなった。

 

 儒教は前王朝の隋より受け継がれた、〈科挙〉という官僚登用試験において、その古典が試験科目に組みこまれた。

 

 これらの動きは、魏晋南北朝時代における〈六朝文化〉に見られる貴族主義を排し、漢民族による国家支配を確たるものにしようとするものである。

 

 つまり漢民族による、広大なアジアと多種多様な民族たちの統治が志向されたのだ。

 

 これはまさに、漢民族による「中世的ナショナリズム」の確立である。

 

 ちなみに、同時期の日本にもまた似た動きがあった。

 

 元来、日本とは、北方や南方や西方のアジア地域より、故郷では生きていけなくなった者たちが逃れてきたアジール(逃避所)であった。

 

 それが 7 世紀には大和朝廷の支配が整い、朝廷は虚構の「ヤマト民族」という概念を構築した。

 

 そしてヤマト民族の王である自分たちによる、日本統治の正統性・正当性を主張した。

 

 その成果が、712 〜 720年にかけておこなわれた、『古事記』、『日本書記』等の編纂である。

 

 そうした意味では、同時代のイスラム教もまた、アラブ人による教団主導を言明している。

 

 その証拠が、聖典『コーラン』がアラビア語で書かれており、他の言語に翻訳された『コーラン』は、すでに『コーラン』ではないとする態度である。

 

 さらにつけ加えるなら、ヨーロッパにおいても7 〜 8 世紀はローマ教皇とフランク王国が、より接近を強めた時代である。

 

 フランク王国の国王は、ローマ教皇に承認されることによりヨーロッパ支配の正当性を獲得し、またローマ教皇も王国の国力により、自らの権威向上を図ったのだ。

 

 そうしたわけで、7 〜 8 世紀という時代は、世界的に〈中世的ナショナリズム〉が台頭した時代と言える。

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管理人 水無川 流也