「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

O弘仁・貞観文化−天平文化と国風文化の過渡期的あり方 O弘仁・貞観文化−天平文化と国風文化の過渡期的あり方

弘仁・貞観文化とは?

 平安京遷都から 9 世紀後半にかけ仏教や漢文学、および宮廷における儀式などからなる、〈弘仁・貞観文化〉が興った。

 

 はじめに、このことは日本の文化史上、どういう意味があるのであろうか?

 

 この点は端的には、日本の古代王朝がとりあえずの完成を見たため生まれたものだと言える。

 

 それは飛鳥時代から奈良時代にかけ、中国より伝わった仏教や漢字がわが国のものとして消化され、仕上げられたものという意味である。

 

 またこの弘仁・貞観文化を原型として、平安後期には〈国風文化〉が成立した。

 

 国風文化は、〈かな〉という文字、各種の文学、立像や建築物など、どれを見ても、すぐにわが国固有のものと理解できるものである。

 

 つまりは、国風文化において日本はようやく、大陸から完全に独立した文化を生んだと言えるのだ。

 

 その意味では、弘仁・貞観文化は、まさに天平文化と国風文化の中間項として位置する文化だとわかる。

 

 なぜなら、まずこのことは「O天平文化を生んだ平城京の、偉大性と未熟さ」のページで述べた。

 

 天平文化とは、技術の点では唐の文化に見劣りしないものの、その内容を表現するにあたり、不自由なかたちで唐代文化に頼らざるを得なかったからだ。

 

 その一例が、『古事記』、『日本書紀』、『万葉集』などに見られる、「仮名文字」という表現方法である。

 

 その点で述べれば、弘仁・貞観文化は自在に漢字を駆使できるまでになった。

 

 この点は、たしかに進歩である。

 

 ところが使用されている文字は、やはり漢字であるため、これを完全にわが国・固有の文化とは言いがたい。

 

 そうした点から、弘仁・貞観文化とは、天平文化の限界性を突破しつつもいまだはっきりとした独自性を獲得していないのである。

 

 よって弘仁・貞観文化が、天平文化と国風文化の中間地点のものであるという根拠は、この点にあるのだ。

 

 ではここで、具体的な弘仁・貞観文化のあり方を見てみる。

弘仁・貞観文化 概要

 平安京遷都がおこなわれた際、日本文化の担い手である貴族や僧たちのあいだで、新たな文化を創造しようという、気風がみなぎった。

 

 その結果、まず『日本書紀』の後を受けた、漢文体の国史として『続日本紀(しょくにほんき)』をはじめとする『六国史(りっこくし)』が著された。

 

 そのように、この時代は漢文体による歴史の叙述が流行したのである。

 

O弘仁・貞観文化−天平文化と国風文化の過渡期的あり方
『続日本紀』 写し
借用元 http://suido-ishizue.jp/nihon/04/01_1.html

 

 その他にも、さまざまな公的・私的漢詩文集が作成された。

 

 さらには唐風の書道や流行し、嵯峨天皇、空海、橘逸勢(たちばなのはやなり)らは、その道の名手として「三筆」と呼ばれた。

 

 くわえてこの時代は、貴族の子弟に儒教的教養を授ける〈大学〉のほかに、庶民のための仏教教室までも出現した。

 

 かつ、また嵯峨天皇の代から、宮廷での儀式や礼法が整えられた

古代国家の完成

 まずこのように、歴史書の編纂が流行するということは古代王朝としての日本が、ほぼ完成されたということを意味する。

 

 なぜなら、これは世界中の国家、とくに中国に顕著に見られる現象だが、王朝が整備されると、その国家支配の正当性を証明する必要に迫られる。

 

 すると当然に、現王朝が歴史的にどれほど正統的な支配者であるか、あるいは旧体制はどれだけ間違っていたかを、書物で訴えるのである。

 

 革命の国、中国においては、王朝が交替するたびにそうした現象が発生し、かつ旧い歴史書はその都度、廃棄された。

 

 そのためかえって、現代から見て歴史の真相がわかりづらくなっている。

 

 ところでこの時代の日本で編纂された歴史書は、おもに『日本書紀』の続編としてのものである。

 

 つまりはこの時代は、『日本書紀』という根幹としての国史はすっかり定着したので、その枝葉の書物も次々と現れた、ということである。

 

 くわえて、宮廷における儀式や作法が整備されたということは宮廷内行事の内容はすでに完成したため、その形式が調整されたことを意味する。

 

 つまり弘仁・貞観文化とは、完成された古代王朝の、微調整的な機能を果たしたものとも言えるのである。

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管理人 水無川 流也