「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

J六朝文化の、特徴と先進性と限界性-早すぎた“近代” J六朝文化の、特徴と先進性と限界性-早すぎた“近代”

六朝文化の特性

 魏晋南北朝時代は戦乱の絶えぬ時期であったが、多くの民族や国民が交じり合ったため独自の文化が花開いた

 

 これを〈六朝(りくちょう)文化〉と呼ぶ。

 

J六朝文化の、特徴と先進性と限界性-早すぎた“近代”
魏晋南北朝時代 王朝の変遷
借用元 http://www.geocities.jp/timeway/kougi-32.html

 

 当時代は国家の統制が弱まった分戦時期ながらも、逆に自由な思想や文化が成立し得たのである

 

 くわえて魏晋南北朝時代は、貴族と民衆のあいだで、とてつもない経済格差が開いた。

 

 貴族は〈荘園〉を経営することで、多様な産業を支配し、また逆に民衆は戦乱から逃げ、流民となったり、あるいは荘園で奴隷同然の労働者になったりした。

 

 世界史的に見て、この時代にもっとも近い社会は、〈絶対主義〉が確立された近世ヨーロッパである。

 

 六朝文化の内容は貴族趣味的・幽玄であり、なおかつ“実用性”、“宗教性”から離れた、「文化のための文化」の様相を呈している。

 

 そしてこれは重要なことであるが、こうした浮世離れした文化が“貴族”によって創られたのは、史上初のことである。

 

 たとえば〈古代ギリシャ哲学〉などは、たしかに世俗から離れ、奴隷に全労働を押しつけた“市民”から始まった。

 

 しかしこの場合、もちろん市民”は“貴族”ではない

 

 くわえてギリシャ時代とは、けっして平和ボケできる太平の時代ではなかったのだ。

 

 まず国内や家庭をどう治めるか、という現実的な問題を、当時の市民たちはもっていた。

 

 かつ、敵対するライバルであるポリス国家〈スパルタ〉や、〈アケメネス朝ペルシャ〉にどう対応するか、という外交的課題もあった。

 

 よって当時のギリシャ(アテネ)市民は、空理空論のみを語っていたのではない。

 

 実質上の対峙すべき、内政・外交の事案についても、論争を交わしていたのである。

 

六朝文化の革新性と、成立理由

 また古代ギリシャに限らず、上層階級により興された文化は、もちろん六朝文化以前にも存在する。

 

 たとえば古代エジプトにおいては、〈アマルナ美術〉という独自の美術品が登場している。

 

 くわえて古代インドでは、〈仏教〉という、〈哲学〉にきわめて近い宗教も存在している。

 

 しかしこれらの文化における担い手はやはり宗教の神官や、真理を求めて出家した者である。

 

 またこれらの文化が誕生した理由は、「人はどう生きるべきか」という、きわめて現実的かつ宗教的なものである。

 

 さらに美術品にしたところで、古代人が美しい像を造るのは、「神の御姿」をより美しく表現するためである。

 

 主体はあくまで“”であり、「人間が楽しむ」ことではない。

 

 あるいはローマ市民のあいだでは、「パンとサーカス」といった、ぜいたくを楽しむだけの文化も存在した。

 

 ところがそのローマの食文化や見世物は、現在まで“文化”というかたちでは残っていない。

 

 それは単なる、「消費の探求」でしかなかったのだ。

 

 この点から述べれば、現代までも鑑賞の対象として遺っている〈六朝文化〉はいかに革新的かがわかる

 

ただそうは言っても、この時代は産業振興や貴族の健康維持のため、農業技術書である『齊民要術』や、医学書『傷寒論』などの実用書も書かれてはいるが。

 

 いずれにせよ、文化の主役が貴族であったことには、違いない。

 

 前述したように、六朝文化同様、有閑貴族をパトロンとする高度な文化が次に生まれたのは、近世ヨーロッパである。

 

 この時期では音楽を例に挙げると、バッハ (1685 〜 1750) の時世はまだ、〈バロック音楽〉の時代であるので、宗教性(キリスト教)からはいまだ離脱していない。

 

 異教の神々をあつかった、モーツァルト (1756 〜 1791) の時代に入りようやく、西洋の交響曲は純粋に、娯楽や鑑賞を目的としたものになったのである。

 

 とするならば、六朝文化とは西洋文化より 1,400 年も進んでいたということになる。

 

 その理由は、どこにあるのか?

 

 それは、N儒教ははたして、宗教か?のページにおける、「儒教の本質」の章で述べたとおりである。

 

 中国人とは、まず“宗教”をもたない民族である。

 

 よって、他の民族が本格的な「宗教時代」に突入する2,500 年も前に中国ではすでに「社会の近代化」が成立していたのだ。

 

 だがその見返りとして、中国では 2,000 年来、社会や思想の発展もなくまた他民族が「宗教時代」に獲得した、文化遺産ももたない

 

 ところが「六朝文化の誕生」とは、そうした中国人の無宗教性が良い面で現れた現象と言えるだろう。

 

 なぜならヨーロッパが「暗黒の中世」に突入する同時期に中国ではすでに〈近代文化〉を生んでいるからである。

 

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管理人 水無川 流也