「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

M元・モンゴル軍に見られる、中世的国家の最後の大爆発 M元・モンゴル軍に見られる、中世的国家の最後の大爆発

「騎馬民族最強」の最終段階

 元・モンゴル帝国の隆盛とその崩壊は、「騎馬民族最強の時代」の終焉を意味するものであるとも言える。

 

 13 世紀のモンゴル人は、〈馬上射弓〉により世界を制したが、この戦術そのものも、“近代”においては古びたものとなった

 

 なぜなら“近代”には、銃や大砲といった、より強力な兵器が出現したからである。

 

 よってモンゴル帝国の後に、ユーラシア大陸には強大な遊牧民族による長期的国家は、ほとんど現れなかった。

 

 それはほぼ、17 世紀に東アジアで成立した〈(しん)〉だけと言って、差しつかえない。

 

 満州の騎馬部隊を出自とする清はたしかに、その時代において広い範囲にわたる大帝国を築いた。

 

 しかしこの点は逆に、当時における東アジア世界の後進性を示すものでしかない。

 

 なぜなら、騎馬民族の武力でもって大国を造れるということは当地の軍事技術が、同時代のヨーロッパより、はるかに劣っていたことを意味するからである。

 

 さらにはイスラム教の国家とは、基本的に遊牧民族が主体であるものだ。

 

 ところが前述したように、近世初期に成立したイスラム教の強国、オスマン・トルコは、定住民国家であった。

 

 中世とは、遊牧民族の全盛期であり近代とは定住民族の時代だと考えれば、モンゴル人の帝国とは、遊牧民族国家における最後の輝きとも言える。

 

 またさらに中世とは、イスラム帝国や大唐帝国のように、東洋人の国家が主導する時期であった。

 

 ならばモンゴル人の活動を最後に時代の主役は東洋人から西洋人へと移っていったとも考えられる。

モンゴル帝国が、〈近代国家〉を生んだ

 モンゴル帝国の範囲がおよんだ地域、およびモンゴル帝国が興ってからの時代には、「近代的な」国家が多く出現することとなった。

 

 「近代的国家」とは、さまざまな定義が可能であるが、ここでは、以下のような国を指すものと考えていただきたい。

 

 「一国一人の王により支配され、国民は基本的に一民族からなり、一つの教義(宗教)をもとに統治され、他国とは確固たる国境により、隔てられた国家」である。

 

 これはトルコの〈オスマン朝〉、インドネシアの〈マジャパヒト王国〉、タイの〈アユタヤ朝〉、およびヨーロッパ諸国、〈元寇〉後の日本などが挙げられる。

 

 ここではすべてを説明する余裕はないため、ヨーロッパ諸国と日本についてだけ述べる。

 

 まずヨーロッパでは、14 世紀以降に〈教皇のバビロン捕囚〉等の事件が起きたため、政治の実権が教皇から国王へと移っていった

 

 くわえて〈英仏百年戦争〉などが発生したため、ヨーロッパでは「一国家」という概念が浸透していった。

 

 それまでのイギリスとフランスは、両国ともノルマン人により征服された国であったため、明確な区別はなかったのに、である。

 

 つまり当時のイギリスとフランスは、同一文化圏に属していたのだが、〈百年戦争〉を機に、きっぱりと別の国家となったのだ。

 

 さらに日本であるが、こちらは 13 世紀後半に、2 度にわたり=〈モンゴル軍〉の襲撃を受けた。これを「元寇」と言う。

 

 元寇により、時の鎌倉幕府は、功労のあった武士たちに満足な報酬が支払えなかったため、支配力を落とした。

 

 そうしたなかにあり、後醍醐天皇は幕府の権力を朝廷が確保することを考え、足利尊氏らとともに鎌倉幕府を倒した(=建武の新政)。

 

 結局、後醍醐天皇の企ては成功せず、彼は尊氏に破られた。

 

 しかしいずれにせよ、当時の日本には一時的にせよ、天皇による一元的な権力構造ができたのは、事実である。

 

 そのように、中世的、あるいはアジア的な支配体制からなるモンゴル帝国が〈近代国家〉の原型を造ったのである。

 

 このことは意外に思えるかもしれないが、発展史観の観点から見れば、じつに当然のことである。

 

 なぜなら発展史観の論理にしたがえば新体制とは、旧体制の矛盾と限界が極言に達したときにのみ、現れるものだからである。

 

中世後期とはもはや、「騎馬による、移動と通商」という手段では、時代の生産能力を支えられないところまで来ていたのだ。

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管理人 水無川 流也