「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

G.アフリカ大陸の通商路をつくった、イスラム王朝 G.アフリカ大陸の通商路をつくった、イスラム王朝

内乱と政争の大陸、アフリカ

21 世紀現在のアフリカは、内紛と対外戦争、および飢餓と貧困に満ちているように見える。

 

 そうしたアフリカの災難は、世界全体に影響をあたえる規模のものではないが、当地においてはつねに戦乱が絶えないような感をあたえる。

 

 もちろんこうしたアフリカ観は、おもにマスコミを通じて形成されたものであり、一種のステレオタイプではあろう。

 

 また、アフリカ全体では数十年前より治安が安定してきており、近年になり紛争が減ってきているのは確かである。

 

 しかしアフリカのどこかで、いつも戦火が起きているのも事実である

 

そうした現象は、何によるものであろうか?

 

 まず第一点として言えることは、治安が悪い地域は、アフリカの中央から北部側に圧倒的に多いということだ。

 

 

G.アフリカ大陸の通商路をつくった、イスラム王朝
2014 年度のアフリカにおける危険地帯
借用元 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/2014/html/chapter2_07_01.html

 

 そしておおよその区分けをすると、アフリカの北半分はイスラム教国が多く、逆に南半分はキリスト教信者が多数、住む地域が多い

 

G.アフリカ大陸の通商路をつくった、イスラム王朝
アフリカの宗教分布図。緑がイスラム教。紫がキリスト教
借用元 http://signsoftimes.seesaa.net/article/242773440.html

 

 この現実は、何を示すのであろうか?

アフリカ史 概観

 以上の点を、やや図式的に歴史から説けば、ほぼ以下のようになる。

 

 まず古代のアフリカには、いくつかのアジア的国家が存在した。

 

 またその文明の質は、けっして低いものではなかった。

 

 この時代のアフリカは、エジプトなどをのぞけば大規模な戦乱は少なかった

 

 さらにそうした小国間には、あまり交通は存在せず各共同体はほぼ自律的に成り立っていた

 

 しかし中世おいてイスラム教が伝えられると、多くの部族がこれに改宗し、そのためアフリカ大陸の北半分はほぼイスラムの文化圏となった

 

 それにより当地域は商業が盛んになったが、治安は安定しており、戦争はほとんどなかった

 

 ところが 19 世紀に入ると、アフリカには西洋人がやってきてほぼすべての地域を植民地化した

 

 アフリカ各国の土地や利権は、西洋列強により勝手に線引きをされたため、支配者と被支配者、あるいは支配者同士の争いが勃発した

 

 さらに近代以降も各共同体・各民族・各国家間の利害関係は複雑に入り組んだため、第二次世界大戦後もアフリカは紛争や内乱が絶えない地域となった

 

 アフリカは冷戦期にはとくに西側・東側諸国の代理戦争の場となった。

 

 しかしそれ以後は、イスラム教圏における土地や資源の利権争いが目立つようになった。

 

 以上の点から言えることは、アフリカの平和を決定的に乱したのは近代以降における西洋人の侵入である

 

 よって当地は、イスラム教に治められていた中世まではほぼ平安だったのである

 

 ここから、アフリカがひとつの文化圏となりえた、中世までの歴史をくわしく見てみる。

アフリカの古代から、イスラム化されるまで

 まずアフリカでエジプトをのぞけば、現在、確認されえるもっとも古い国は、〈クシュ王国 (前 920 ごろ 〜 前 350 ごろ)〉である。

 

 クシュ王国は、メロエに都を置いたころ (前 670 ごろ〜 前 350 ごろ)は、製鉄と商業で繁栄し、独自の〈メロエ文字〉を用いた。

 

 また西アフリカのガーナ王国 (7 世紀ごろ 〜 13 世紀ごろ)は、を大量に産出したため、イスラム商人と塩を交換していた。

 

 ガーナ王国が衰退するにつれ西アフリカはイスラム化が進展した

 

 さらにマリ王国(1240 〜 1473)やソンガイ王国(1464 〜 1591)の支配者層は、イスラム教徒であった。

 

 ソンガイ王国は貿易で栄え、交易都市、トンブクトゥは、内陸アフリカにおけるイスラム文化の中心地となった。

 

G.アフリカ大陸の通商路をつくった、イスラム王朝
トンブクトゥに残る遺跡 (後にアル・カーダに破壊された)
借用元 http://facta.co.jp/article/201209050.html

 

 またインド洋に面したアフリカ東岸ではムスリム商人が都市に住み着き、貿易を盛んにした

 

 およびこの海岸地域から、アラビア語の影響を受けたスワヒリ語が、アフリカ東部の共通言語として発展した。

 

 

イスラム教がアフリカで受容された理由

 では最後に、なぜ当時のアフリカでイスラム教が受け入れられたのか、を述べる。

 

 これはおそらく、中世初期の段階でアフリカ各地の生産力が向上したため、余剰生産物を流通させる必然性が生じたからであろう。

 

 よってそれには、「商人の宗教」であるイスラム教が最適だったのである。

 

 アフリカにおけるイスラム教の浸透は、「支配者層から民衆へ」という「上から下へ」の動きが目立つ。

 

 これはローマ帝国における、キリスト教の定着とは正反対の作用である。

 

 ここからアフリカ各国の指導者層は、共同体の維持・繁栄のため、国教としてイスラム教を選択したと考えられる。

 

 なぜならイスラム教は、商業のルートを拡張し、各共同体が同一の価値観や慣習を共有することを可能とさせる宗教だからである。

 

 また現実にその結果として、アフリカ各国はアラブやインド方面への貿易を成功させ、国力や文化力を増強することに成功した。

 

 および内政面を見ても、イスラム教は全信者の「信仰上の」平等を唱える宗教であるから現実上の」身分や富の格差は等閑視されたであろう。

 

 さらにイスラム教の本家であるアラブ人にしてもアフリカの金属をはじめとする特産品は、魅力的であったことだろう

 

 くわえて西のアフリカをイスラム教圏とできれば、東のインドもイスラムの支配下にあるのだから、当時のほぼ全世界をイスラム勢力が統治することとなる

 

 そのように布教する側とされる側の利益が合致したからこそ、イスラム教はアフリカで拡がっていったと考えられる。

関連ページ

@ヨーロッパにおけるゲルマン民族大移動-原因と結果
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
@フランク王国の成立と実態-西洋中世の完成と、文明の程度
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
@フランス、イタリア、神聖ローマ帝国の形成と、今日のヨーロッパ
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
@封建制度と自由都市が、近現代経済体制をつくった
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
@中世キリスト教文化が、キリスト教否定を招くという矛盾
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
@西洋中世文化という少年期-“聴覚”の重要性
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Aビザンツ帝国の人民抑圧を正当化する、ギリシャ正教
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Aビザンツ帝国の、興亡と盛衰-朽ちていくことが宿命
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Aビザンツ帝国の、歴史的意義と発展段階-文明の仲介者
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Aスラブ諸国の形成と特徴-彼らはなぜ、専制的なのか?
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Bヴァイキングの活動-忘れ去られた、真の西洋の支配者
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Bヴァイキングの歴史的意義-その本質は、「海の騎馬民族」
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
C十字軍 -「文明の衝突」の原点-逆転する時代の覇者
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
C十字軍-和解不可能なキリスト教とイスラム教の原点
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Dローマ教皇と国王-特異な二重支配体制-権威と権力の分掌
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
D教皇権の盛衰と、国王権の伸長-近世的社会を準備
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
E英仏百年戦争と、議会の成立-王権の強化を生む
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
E百年戦争の原因と経過と結果-近代ヨーロッパの構図を形成
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Eバラ戦争が決定づけた、イングランドとスコットランド
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Fイスラム教の誕生と本質-なぜ時代はイスラム教を必要としたか
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Fスンナ派とシーア派の差異-ペルシャ文明の関与
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
F.『コーラン』の構造に見る、ムスリムの行動原理
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Gアッバース朝と後ウマイヤ朝-中世の覇者、中世西洋の抑圧者
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Gトルコ系王朝という、中世・近代西洋の「最強仮想敵国」
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Gインド、東南アジアにおける、イスラム教の伝播-人口増加を呼ぶ
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Hイスラム文化と、その本質-〈古代〉と〈近代〉の媒介者
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
H神秘主義という、イスラム教の「正統的異端者」
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Hイスラム文学から読み解く、中世世界-聴覚優先
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Hイスラム文化 -造形美術と音楽-イスラム芸術の特殊性
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
I東南アジア諸国における、共通した特性
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Jベトナム-中国(漢字)文化圏 -強国支配に対し、抵抗
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
I東南アジアにおける、上座部仏教(小乗仏教)の浸透
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Iタイ、カンボジア等で、なぜ仏教は受容されたか?
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Iマレーシア、インドネシア-近代化できたイスラム教国
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Iフィリピン-ラテン・アメリカに近い、カトリック文化圏
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。

管理人 水無川 流也