「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

E百年戦争の原因と経過と結果-近代ヨーロッパの構図を形成 E百年戦争の原因と経過と結果-近代ヨーロッパの構図を形成

百年戦争の歴史的位置づけ

 まず〈百年戦争〉とは、中世末期(1339 〜 1453)にイギリスとフランスのあいだで戦われた戦争を指すある。

 

 この戦闘がこれほどまでに長きに渡って続いたのは、イギリス・フランス間で長期にわたって所有権が争われた、領土をめぐる問題だったからである。

 

 この百年戦争が後世にもたらした影響については、まずマクロの視点で見れば、以下のようになる。

 

 これにより 10 世紀におけるヴァイキングの侵入(ノルマン・コンクエスト)から始まる、 イギリス・フランスの親戚関係が完全に絶たれたこと。

 

 またそのためその後、イギリスとフランスは絶対的なライバルとなり、両国は〈第二次百年戦争〉をはじめとする、数多くの戦争を引き起こすこととなる。

 

 および、直接的な武力を用いるものでなくても、イギリス、フランスの戦いは経済力、または政治力をめぐって 20 世紀初頭まで続く

 

 くわえてこの両大国間の緊張状態は、近現代ヨーロッパにおいてヨーロッパ各国の国力を世界に向け膨張させる、強力な原動力となった。

 

 このことはとくに、帝国主義時代の植民地政策において顕著である。

 

 さらに百年戦争は、ヨーロッパ内における初の「国家 VS 国家」の全面戦争でもあるため、この戦争を契機に近世以降における多くの大戦の火蓋が切られたとも言える。

 

 その結果として、ヨーロッパ各国で国王を頂点とする〈国民国家〉の観念が形成された。

 

 くわえて国王の権威が向上し、兵器・火器が発達したため、相対的に“騎士”や“封建領主”は没落していった。

 

 その意味で百年戦争とは、ヨーロッパに中世の終わりと近世の始まりをもたらした戦争とも言える。

百年戦争の経緯

 百年戦争の発端は毛織物を特産品とする、フランス北東部にある〈フランドル地方〉をめぐっての、イギリス、フランスの領有権争いであった。

 

 フランスはこの地方へと勢力を伸ばそうとしたが、イギリスは羊毛で利益を挙げていたため、これに対抗した。

 

 その際に当時のイギリス国王、エドワード 3 世は、フランス王位継承権をも主張したので、両国は 1339 年に戦闘状態に入った。

 

 当初フランスは、国内で黒死病が蔓延し、内乱が起きるなどしたため、劣勢であった。

 

 しかしフランスで、フランスを護るようにとの神託を得た、〈ジャンヌ・ダルク〉という少女が、オルレアンという地域において、イギリス軍を大敗させた。

 

 ジャンヌ・ダルクはフランス国王・シャルル 7 世をよく助け、ついにほぼフランスの全領土からイギリス軍を追い払った

 

E百年戦争の原因と経過と結果-近代ヨーロッパの構図を形成
百年戦争の様子
借用元 http://matome.naver.jp/odai/2136140358124875701/2136145715139102703

 

 ジャンヌ自身は、英国軍に捕らえられ、処刑された。

 

E百年戦争の原因と経過と結果-近代ヨーロッパの構図を形成
ジャンヌ・ダルク
借用元 http://www.shouzou.com/mag/p16.html

 

 しかし、この戦争はフランスの勝利に終わった

 

 シャルル 7 世はそれに乗じ、大商人たちと財政を建て直し、常備軍を設置したため、フランスの中央集権化はさらに進展した。

 

E百年戦争の原因と経過と結果-近代ヨーロッパの構図を形成
シャルル 7 世
借用元 http://www.shouzou.com/mag/p15.html

同時期の周辺諸国

 上述したように百年戦争とは、ヨーロッパにおける最初の「国家 対 国家」の大戦であった。

 

 イギリスは戦前からすでに、ノルマン人の王朝が形成されており、フランスでは戦後に国王の中央集権化が進展した。

 

 そうしたわけでこの時代には、ヨーロッパ諸国では「中央集権化」が共通の課題となった。

 

 これについては、中央集権化に成功した国と、そうでない国とで明暗が別れた。

 

 まず、成功例から述べる。

 

 はじめにイベリア半島は、中世をつうじイスラム国である〈後ウマイヤ朝〉の支配下にあった。

 

 しかしキリスト教徒たちは約 800 年にわたり、“国土回復運動(レコンキスタ)”をおこない、15世紀にはついに成功した。

 

 当地には 1479 年にスペイン王国が確立し、12 世紀に成立したポルトガルも、15 世紀には王権がしっかりと根づいた。

 

 このスペイン・ポルトガルの両国は、イスラム勢力を駆逐した勢いにそのまま乗りかかり大航海時代の先駆けとなった。

 

 また北欧では、デンマーク女王を中心に、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの三カ国が同盟を結び、強力な勢力となった。

 

 およびスイスも、当時ヨーロッパの大勢力であった〈ハプスブルク家〉からの独立に成功し、それが現在における永世中立国としてのスイス連邦の母胎となった。

 

 しかし中央集権化が進まず、国家が分裂状態に置かれた国もあった。

 

 その典型例が、ドイツイタリアである。

 

 当時、神聖ローマ帝国と呼ばれていたドイツは、300 もの領邦に分断されていた。

 

 くわえてドイツでは、諸侯や自由都市の力も強いうえに、歴代皇帝は〈イタリア政策〉により、イタリアを統合しようと、遠征をくり返した。

 

 そのためドイツ国内では空洞化が進み、皇帝が不在の〈大空位時代(1256 〜 1273)〉も経験した。

 

 結局ドイツは、皇帝ではなく領邦での集権化が進行し、また 15 世紀以降、ハプスブルク家による統一も試されたが、失敗に終わった。

 

 ドイツにおけるこの分裂状態が、やがて三十年戦争(1618 〜 1648)の原因のひとつともなる。

 

 同様にイタリアも、中世には複数の都市共和国が分立していた。

 

 だがその都市国家間で、教皇派と皇帝派が戦ったため、統一はますます遠のいた。

 

 およびスラヴ諸国は、中世後期にはおもにドイツから植民活動を受けたため、農民たちは“農奴”として領主から強い束縛を受けた。

第二次世界大戦の構図

 この中世後期におけるヨーロッパ各国の状態は、すでに 20 世紀における第二次世界大戦の構図を形成しているのがわかる。

 

 第二次世界大戦においては、国内統一に立ち遅れたドイツとイタリアが、ファシスト政権をかたち造った。

 

 またナチス・ドイツは、スラヴ諸国を再度、植民地化しようと試み、その結果、独ソ戦が勃発した。

 

 一方、中世後期にはすでに中央集権化に成功していたイギリスやフランスは、帝国主義の時代に充分な海外領土を獲得していた。

 

 ナチス・ドイツが英仏に主張したのは、「植民地の再分配」である。

 

 中世後期におけるヨーロッパの力関係は、このように 20 世紀半ばの世界大戦にすでに決定的な影響をあたえていたのである。

 

 あるいは別言すれば、ヨーロッパ中世末期の勢力図とは、近世・近代を超え、最終的に近代戦の総決算ともいえる第二次世界大戦でやっと決着したのである。

 

E百年戦争の原因と経過と結果-近代ヨーロッパの構図を形成
第二次世界大戦における勢力図
借用元 http://note.chiebukuro.yahoo.co.jp/detail/n137741

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管理人 水無川 流也