「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

@西洋中世文化という少年期-“聴覚”の重要性 @西洋中世文化という少年期-“聴覚”の重要性

中世の文学

 中世においては、〈騎士道〉を描いた〈騎士道物語〉が盛んに語られた。

 

 〈騎士道物語〉とは、中世において戦争の主役であった騎士たちによる、戦場での活躍、主君への忠誠、および貴女との恋愛などを描いたものである。

 

 代表的な作品に、『ローランの歌』、『トリスタンとイゾルデ』、『ニーベルンゲンの歌』、『アーサー王物語』などがある。

 

 これらは 12 世紀をピークに、学術用語のラテン語ではなく、当時の俗語で書かれた。

 

 および、そうした物語は、〈吟遊詩人〉と呼ばれる放浪の宮廷詩人たちによって語られた。

 

 結果として騎士道物語は、騎士が没落していく 13 世紀にはつくられなくなっていき、また吟遊詩人も本格的な宮廷音楽の登場により、必要とされなくなった。

 

 しかしこうした現象から、以下のことがわかる。

 

 

@ 中世には、素朴ながらも、キリスト教の教義とは直接の関係がない娯楽が生まれた。

 

A 吟遊詩人の“歌”や“語り”が重宝されたということは、〈中世〉という時代の“感情性”を表している。

 

@西洋中世文化という少年期-“聴覚”の重要性
中世の吟遊詩人たち
借用元 http://rimaroom.jugem.jp/?eid=760

“聴覚”の時代、〈中世〉

 ます @ であるが、キリスト教が浸透を始めた時期には、このような娯楽は生まれなかったはずである。

 

 なぜなら社会全体が、キリスト教の教義を吸収するのに精一杯で遊びを生む余裕はなかったであろうからだ

 

 また、〈騎士道〉という概念がいかにキリスト教と不可分とはいえ、〈騎士道物語〉には、多くのゲルマン的な土着性がある。

 

 だから近代になって、騎士道物語は「反キリスト教的人物」と見られる作曲家・ワグナーや哲学者・ニーチェにより、多くの作品や批評における題材とされている。

 

 ということは、中世も後期になると、キリスト教はすっかりとヨーロッパに行き渡り、キリスト教に直接的な関係のない娯楽を生む余裕ができたということだ。

 

 またこのことは、近代後期に本格化した、西洋人によるキリスト教からの離脱の、第一歩目とも解釈できる

 

 次に A である。

 

 吟遊詩人の歌や講談が娯楽の主流であったということは、中世とは“聴覚”の時代であったと言うことができる。

 

 一般に“聴覚”とは、“感情”に深く関与した認識能力である。

 

 人は言葉や音楽を聴くことにより、その内容をおもに“感情”によって理解する。

 

 ちなみに“感覚”とつよく結びついた知覚能力は、“触覚”、“嗅覚”、“味覚”である。

 

 そして“理性”に働きかける感官とは、“視覚”である。

 

 これら、“理性”、“感情”、“感覚”の関係性については、「古代H哲学の登場 2.真・善・美とは?」のページを参考にしていただきたい。

 

 ここから結論だけ述べれば、以下のようなことが言える。

 

古代=“”の時代」、「中世=“”の時代」、「近代=“”の時代」である。

「善=道徳観念」により、人の育成がなされた時代、〈中世〉

 上記リンクページを読んでいただければ、人間とは「体育」、「徳育」、「知育」の順に、教育されるということが、わかっていただけるであろう。

 

 またここから、“徳育”とは、“感情”へと働きかける教育である。

 

 よって〈中世〉とは、人類(おもに西洋人)が善=道徳観念」により、自己自身を形成する歴史的段階だとわかる

 

 人類はすでに、古代〉という幼児期を経て、〈中世〉という少年期に入ったのだ

 

 この点は、〈中世〉においては、人は〈キリスト教〉の教義を“絶対善”とし、教えこまれたことを思い出していただければいい。

 

 〈中世〉の時点では、古代ギリシャのように、各種スポーツや芸術が教育の主流となることはない。

 

 さりとて、〈中世〉では〈近代〉のように、各人が自分の意見を求められるということもない。

 

 〈中世〉においては、人はただキリスト教の教条を信じその“善性”を身に染みこませるだけである

 

 その際における“教育”とは、ひたすら『聖書』の内容や神父の説教を、「耳で聴く」ものである。

 

 この中世を過ぎ、人類はいよいよ“理性”(=自分のアタマで、“真”を合理的に考える)の時代、〈近代〉へと突入することになる。

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管理人 水無川 流也