「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

H哲学の歴史的意義-プラトンからアリストテレスへの発展 H哲学の歴史的意義-プラトンからアリストテレスへの発展

プラトンとアリストテレス

 ソクラテスの後に登場するのが、ソクラテスの弟子、プラトンである。さらにプラトン後に現れ、ギリシャ哲学を集大成させたのが、プラトンの弟子、アリストテレスだ。

 

それぞれの哲学体系を見ていく。

 

 まずプラトンは、師ソクラテスがおこなった対話を書物にし、また弟子たちとの対話をつうじて真理に至ろうとした。

 

 プラトンは〈イデア〉という理念世界を設定し、現世はそのイデアが投げかける影にすぎないとした。
 

 

 余談だが、この〈イデア〉という観念は、後にキリスト教が説く“天国(パラダイス)”における原型のひとつになったと思われる。

 

 次にアリストテレスだが、こちらはわれわれ現代人が学びえる学問の、ほぼすべてをカテゴライズした。

 

 その範囲はあまりに広く、また同一の原理(形質と形相)ですべての学問を説いているのが特徴だ。それゆえに彼は、ギリシャ哲学の完成者なのだ。

 

アリストテレスの書物は現在までに 3 分の 2 も失われたが、主要なものはほぼ残っている。

 

 また彼の学問体系は後にキリスト教が教義化されるとき、キリスト教の世界観を説明するために利用された。

 

 アリストテレスが後代へ残した哲学の影響は、すさまじいものがある。

 

 これはほんの一例だが、16 世紀以降に興った自然科学の学説は、ほぼすべてアリストテレスの自然哲学を叩き台にしている。

 

 逆に言うならば、近代の自然科学とは、アリストテレス自然哲学の否定・解体の歴史」でもある。

 

 そういうわけでソクラテス、プラトン、そしてアリストテレスへ至るギリシャ哲学のなかで、どのような認識の発展史があっただろうか?

 

 それはまさに、学説が古代の段階において、完成していく過程である。ここを簡単に説明する。

 

 まずソクラテスは、一冊も書物を著していない。ソクラテスの真理への道は、つねに対話をおいてなされる。

 

 しかも彼の原理は二元論的である。「真か偽か」「善か悪か」を対立させ、対話をかならずしも完成させず、むしろ後に課題を残すような発言を、彼はしている。

 

 一方のプラトンは、ソクラテスも語った〈イデア〉の概念を発達させ、理想国家を描くまでになった。またプラトンは、おもにソクラテスの対話を書物のかたちでまとめた。

 

 最後にアリストテレスであるが、彼はほぼ一元論のかたちで哲学を完成させた。

 

 プラトンの説く〈イデア〉を「〈可能態〉=素材」、および現実世界を、その素材が運動により完成された「〈現実態〉=完成品」とした。

 

 またアリストテレスは論文形式で哲学書を著しているほか、〈アカデメイア〉という学校で、講義もおこなっている。

 

H哲学の歴史的意義-プラトンからアリストテレスへの発展
アリストテレスの大学、アカデメイア
借用元 http://blog.goo.ne.jp/4456hs/m/200805/1

 

 この三者における思想の表現方法はそれぞれ、以下のようである。

 

 ソクラテスは相手と「 Q&A 」の対話をなした。プラトンは紙上で、架空の対話をおこなった。またアリストテレスは弟子に対し、現在の大学における講義のかたちで教えを説いた。

 

 ここに三者の思想がより高まり、完成されていくのがわかる。

 

 ソクラテスは対話の相手を必要とした。次にプラトンは、仮想の対話者を設定した。そしてアリストテレスに至っては、まったくの単独で、自説を展開できたからである。

 

 こうして古代ギリシャ哲学は、完成されていった。

 

H哲学の歴史的意義-プラトンからアリストテレスへの発展
プラトン(左)とアリストテレス(右)

哲学の歴史的意義

 さて最後に、哲学がはたした歴史的な業績を述べる。近代哲学の大成者・ヘーゲルは、「哲学とは、ミネルヴァのふくろう」と語った。

 

 ある文明が歴史的に終わりを告げる際、最後にその社会を総括するのが、哲学だという意味だ。

 

 しかしまた、史実をありのままに見るならば、これとはまったく正反対の現象も見られる。

 

 つまり前時代の哲学が、次世代における社会体制の基盤となる場合もあるのだ。

 

 たとえば前述したように、キリスト教が教義を確立するにあたって、プラトンやアリストテレスの哲学はおおきく関与した。

 

 そしてキリスト教とは、ギリシャ時代の後に来る古代ローマ帝国の国教になった。

 

 また哲学は、細分化され後代の学問を形成する場合もある。この場合、学問の専門化が進展するため、元祖の思想がどこにあるのか、わからなくなるケースも多いが。

 

たとえば 20 世紀に入り隆盛を極めた、フロイトを始祖とする精神分析は、あきらかに近代におけるカント哲学の亜流だ。

 

 またマルクス主義がヘーゲル哲学を源流としているのは、有名である。

 

 さらに古代ギリシャおよび西洋近代において、哲学とはまさに「学問の王者」だった。そうした時代において哲学とは、あらゆる個別の人文・社会・自然科学の集大成である。

 

 よってそのような個別学問哲学が相互に影響し合うことにより、たがいに発展していったとも言える。

 

 現代における学問の主流は、いうまでもなく科学である。その科学も哲学から分離する過程で生まれ、また哲学は結果的に、宗教を超えることとなった。

 

 したがって哲学とは、現代の視点からながめれば、人類を宗教から離脱させ、人間に科学的思考を可能とさせたのである。

 

ここから哲学とは、宗教科学の中間項であるとも定義できる。

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管理人 水無川 流也