「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

H哲学の登場-哲学発生の条件は? 直観から論理への転換 H哲学の登場-哲学発生の条件は? 直観から論理への転換

○すべての人間は、生まれながらにして知らんことを欲すーソクラテス

そもそも、〈哲学〉とは、何か?

 さて、古代ギリシアの時代に至り、人類はようやく〈哲学〉を生むこととなる。

 

 ではまず、そもそも〈哲学〉とは何か? これは思想家・カール・マルクスによる以下の定義づけで充分である。

 

「哲学とは、思考する宗教である」。

 

 〈宗教〉とはそもそも、人類がそれぞれの歴史的発展段階にしたがって、“直観”により世界全体を説明するための試みである。

 

宗教においては、人は「超越的存在=“神”」から、世界のすべてを体系づける

 

 ところが〈哲学〉とは、“直観”ではなく“思考”により、事象の本質を解明しようとする営みである。

 

 ひとりの人間における一生から考えれば、この段階は 3、4 歳の児童レベルに当たろうか。いわゆる「物心がつく」時期である。

 

 幼いながら“自我”が形成され、物事をありのままにとらえることができるようになる年齢だ。

 

 たとえば自分がボールを手から離したから、それは地面に落ちた。あるいはなにかを食べたから、満腹になったというように、事柄の因果関係が理解できるようになるということだ。

 

 もちろんこの時点では、〈万有引力の法則〉や〈消化器官の仕組み〉などは子供にはわからない。ただ、単純な因果律が把握できるのみである。

 

 しかし人類は、古代ギリシャにおいてそうした「原因と結果の法則」を、ようやく思弁により考察することが可能となったのだ。

古代ギリシャにおいて、哲学が誕生した理由

 ではなぜ、哲学は古代ギリシャを起源にして生まれたのだろうか?

 

 これはよく言われるように、市民ヒマをもてるようになったからである。家事をはじめとする労働は、すべて奴隷がやってくれる。

 

 そうして時間的余裕をもった市民たちは「アゴラ」と呼ばれる広場に集まり、国防やら「世界の根源」やらを議論しはじめた。

 

 ここで市民たちは、自分の主張を通し、逆に相手の言い分を否定するため、“論理”を使うことを覚えた。

 

 またそもそも、身内でもない他者と議論を戦わせるには、“論理”を用いるほかないことも知った。

 

 なぜなら“論理”とは普遍的なものだからである。

 

 たとえば他の民族が、自分たちと異なる“神”を信仰していたとする。ならば彼らと「世界について」を話題にするならば、その彼らの“”を大前提に語るほかない。

 

 というのはその者たちにとっては、”は絶対的に否定できない「教条=ドグマ」だからである。

 

 ところが、以下の事例は世界のどこにいっても共通する現象である。「2 つのリンゴと、同様に 3 つのリンゴを足せば、5 つのリンゴとなる」。

 

 この事実は、地球上どの国のどの民族も否定しないし、できない。

 

 これが“論理”である。

 

 古代ギリシャ人がこのように“論理”の重要性を認識できたのは、彼らが貿易により生計を立てていたからだ。

 

 他の国の他民族を相手に商売をするのだから、自分たちの“常識”は通じないものと自覚する必要があった。

 

 まただからこそ逆に、古代ギリシャ人たちはどこに行っても普遍的に通用する理屈を求めていたのである。

哲学の第一段階、〈アルケー〉の希求

 哲学が始まり最初に話題となったのは、「アルケー」と呼ばれる、この世界を構成する根源とは何か、ということである。

 

 初期の哲学者ほど、世界はすべてある特定の物質や性質により成り立っている。ではその根源物とは何か、という議論をなした。

 

 この答えを、タレスは“”、ヘラクレイトスは“”、ピタゴラスは“”、デモクリトスは“原子(アトム)”と主張した。

 

 なぜ彼らにとって、〈アルケー〉が何よりの問題となったのか? その解答はまさに前述したように、普遍的なもの」を考察するのが“哲学”だからである。

 

 アニミズムの段階においては、人類は自然物や生物に、個々の「神性、霊性」を見ていた。

 

 これが哲学初期の段階においては、以下の点が問題となるのである。

 

「では、そうした石やら、木やら、金属やら、星やら、動物やらすべてが共有している普遍物とは、何か?」。

 

 こうした哲学を、「自然哲学」という。ではなぜ、彼らの考察対象は“社会”や“人間”でなく、“自然”であったのか?
 

 

 これはまさに、哲学宗教と同様の歴史を、後追いしたからである。

 

 宗教でも、最初に主題となるのは自然物であり、その段階の宗教形態は“アニミズム”だからである。

 

 このことは第一章、「@人類の誕生 サルからヒトへー進化の仮説」のページにおける「宗教の起源」の項で述べた。

 

 知性を得るかわりに本能を喪失した人類は、「自分たちをとりまく万物=自然物」に、自分たちの直観により、意味をあたえた。

 

 そのようにしてムリにでも自然を理解しなければ、不安で生きていけないからである。

 

 そうして社会が成り立ってゆくことではじめて、人類は共通の“倫理”や“社会規範”を考えるようになった。

 

 その成果が“”である。

 

 哲学においてもこれと同様、最初に問題化されるのは、自然物である。

 

 人間がもつ疑問とは、まずは外部に対するものから始まり、やがて「自己自身=社会や人間」に至るのだ。

 

 また自然物とは、倫理や人間観にくらべ、より普遍的かつ一般的である。

 

 たとえば、水が高いところから低いところへ流れるという現象は、地球上の陸地においては、どこでも共通している。

 

 ところが、倫理概念である“殺人”はどうであろうか? たしかにあらゆる殺人を、野放しにしている原始民族は存在しない。殺人を際限なく許可してしまうと、共同体が立ち行かないからである。

 

 しかしその殺人にしても、復讐のためなら、あるいは戦争においてなら許されるとする社会はいくらでもある。

 

 というより、殺人のとらえ方は民族により、千差万別であるのが現状だ。

 

 よって「殺人の概念=法のあり方」は、「自然の現象」ほど普遍的ではない。

 

 こうした経過により古代ギリシャ人たちは、以下の疑問を手に入れたのだ。

 

 それは、「“”を抜きにして、〈万物の根源〉=『空間的なものにとどまらず、時間的にも永遠を支配する事象』とは何か?」、である。

 

 こうした理由により、〈自然哲学〉は原初の哲学者たちにとってのメインテーマだったのだ。

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管理人 水無川 流也