「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

Rアメリカ先住民たちの、近世以降の運命−融合か隔離か Rアメリカ先住民たちの、近世以降の運命−融合か隔離か

南北アメリカ文明は、なぜ滅びたか?

 ここで南北アメリカ大陸で栄えた文明が、なぜすべて滅びたか、理由を見てみる。

 

 結果だけ述べるならば、インカ、アステカ文明は、スペイン人の入植により滅ぼされた。

 

 また北米インディアンたちは、イギリス人やスペイン人に虐殺された。

 

 実際にアメリカ大陸を蹂躙した西洋人のやり方は、残虐を地で行くむごたらしさであった。

 

 原住民に言いがかりにしか思えない罪を着せ、処刑する。異なる部族同士に銃をあたえ、殺し合いをさせる。病原菌の付着した毛布を着せる、等。

 

 だが西洋人の非道さを語るのは、当サイトの趣旨でないので、割愛する。興味のある方は、以下の書物をお読みいただきたい。

 

 

◯『インディアスの破壊についての簡潔な報告』 ラス・カサス著 岩波文庫

 

◯『アメリカ・インディアン悲史』 藤永 茂 著 朝日選書

 

 

 重要な点は、歴史をもたないアメリカ・インディアンはその限りでないが、インカ、アステカの文明は、すでに衰退期に入っていた。

 

 したがって西洋人の侵入は、滅亡を決定づけただけであり、それだけが文明衰亡の原因ではない、という点である。

 

 またこのことは、9 世紀ごろに死滅していったマヤ文明にも、当てはまる。

 

 まずインカの場合を見る。インカ帝国は、スペイン人が本格的な征服に乗り出したとき、すでに内戦と外征により、疲弊していた。

 

 さらに中央アメリカから来た天然痘により、全人口の 6 割以上が死亡していたのである。

 

 次にアステカであるが、こちらも異常気象がもたらした病気により、なんと人口が 8 割も減ったという。

 

 くわえてアステカ人は、太陽に捧げる生贄を必要としていたため、周囲の国々と敵対状態にあった。

 

 スペイン人はそこにつけこみ、アステカ帝国の敵国たちとともにアステカを攻め、滅ぼじたのである。

 

Rアメリカ先住民たちの、近世以降の運命−融合か隔離か
アステカ帝国 跡
借用元 http://www.pahoo.org/culture/numbers/year/j1521-csa.shtm

 

 またマヤ文明のケースであるが、これには謎がある。というのは、マヤ住人たちの都市が戦争のような形跡もなく、廃棄されているのが見つかっているからだ。

 

 だがこのケースでもっとも合理的な説明は、以下のようなものである。

 

 干ばつなどの環境の変化。焼畑農業などによる環境破壊。およびそれにともなう、共同体内での秩序の崩壊。こうした複数の要因が重なり、マヤ住人たちは、住む場所を替えたという説だ

 

 いずれにせよ、中南米の古典文明が衰退した根源的な要因は、内的なものであり、西洋人の侵入はあくまで、滅亡への契機にすぎないと考えられる

 

その根因は、16 世紀以降の歴史はすでに西洋近代の時代であり、地球規模で近代文明が広がったからである

 

 もはやその時点でアジア的、未開的な社会は、地上で居場所を失っていったのだ。

 

近世以後の先住人たち

 さて、では西洋人が入植を始めてから、現地人たちはどうなったのか?

 

 まず中南米のインカやアステカの王侯貴族たちは、ほぼ皆殺しか病死により、全滅した。

 

 一般の住人たちも、相当数が理不尽な虐待を受け死んでいったのは、前述『インディアスの破壊についての簡潔な報告』にくわしい。

 

 しかし民衆たちは、すべてが殺されたわけではない。それどころか、入植者であるスペイン人たちとの混血児も多く現れた。

 

 彼らを「メスティーソ」と呼ぶ。

 

 他にも白人と奴隷黒人との合の子は「ムラート」、黒人とインディオとのハーフは「サンボ」と呼ばれる。

 

 ちなみに黒人たちは、奴隷としてアフリカから連行された者たちである。

 

 このようにラテン・アメリカでは、厳密な人種の定義が不可能となるほど混血が進み、現在に至っている。

 

 その理由は、以下のとおりである。

 

 スペイン人が中南米に移住を始めたとき、女性の同伴者がほとんどいなかった。よってスペイン人たちは、現地の女性に自分の子供を産ませたのである

 

 また地元の男性も、貴重な労働力として奴隷的立場で生き残ったため、全滅はせず生きのびたのである。

 

 ところが北米大陸では、事情が異なってくる。

 

 イングランドやドイツ、フランスなどから入植してくる移民たちは、故郷で居場所がなくなった新教徒などが多かった。

 

 よって移民は教団単位でなされたため、そのなかの男女比には、極端な偏りはなかった。

 

 なにより西洋人たちはインディアンを殺しすぎたので、労働力はアフリカからの奴隷でまかなった。

 

 そのため北米大陸における白人は、現地民と混血することがほとんどなかった。むしろ西洋人にとって、インディアンたちは邪魔者でしかなかった。

 

 そうした理由からインディアンたちは、「リザベーション」と言われる居留地に抑留された。

 

 リザベーションは極度に失業率、犯罪率が高い地域となり、そのためインディアンの数はさらに減少していった。

 

Rアメリカ先住民たちの、近世以降の運命−融合か隔離か
アメリカ・インディアンのリザベーション
借用元 http://blog.oup.com/2012/02/dawes-act-congress-indian-reservations/

 

 近年になり、インディアンたちのアメリカ社会への同化政策も進んだが、逆にインディアンたちがこれを拒み、集住を図る傾向も見られる。

 

 あるいはこうした歴史の帰結として言えることは、近世以降、北アメリカ大陸は完全に西洋化された

 

 さらにその結果、当地では未開的な社会は、きれいに消滅したということである。

 

 一方、中南米大陸は先住民の文化や社会制度をかなり受け継いだが、西洋諸国からの独立は、北米よりやや遅れた。

 

 ラテン・アメリカ諸国は、基盤に現地人たちの歴史的遺産を残しながらも、形式的な政治・経済形態は西洋的という、アフリカやアジアに近い国々となった

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管理人 水無川 流也