「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

B「日の沈まぬ国」スペインの、繁栄と没落の原因は同一 B「日の沈まぬ国」スペインの、繁栄と没落の原因は同一

スペインはなぜ、大航海時代の覇者となれたのか

 大航海時代の扉を開けたのはポルトガルだが、当時代における主役は、まちがいなくスペインである。

 

 スペインはポルトガルと同様、〈レコンキスタ〉により、イベリア半島からイスラム勢力を駆逐したエネルギーを、外洋遠征に向けた。

 

 スペインはカトリック国だったので、ローマ教皇からも支援を受け、国家規模で世界の征服事業を展開した。

 

 その結果スペインは、アメリカ大陸をはじめとする、膨大な領土を獲得し、そこから“”をはじめとする莫大な富を得た。

 

 そのため最盛期のスペインは、「日の沈まぬ国」とも呼ばれるようになった。

 

 ところがスペインは、17 世紀中葉には斜陽に入り、後進のオランダやイギリスといった国々に、追い抜かされることとなる。

 

 そうしたスペインの、繁栄と衰退の過程、およびその根因を、ここでは説く。

スペインの隆盛から、没落までの経緯

 まず近世ヨーロッパを語るうえで欠かせない、〈ハプスブルク家〉という名家がある。

 

 ハプスブルク家は中世のスイスから興り、オーストリアを本拠としながら、ドイツの王位も継承した。

 

 そのハプスブルク家は、15 世紀後半にネーデルランド(現在のオランダ)を獲得し、さらにはスペイン王位も受け継いだ

 

 ハプスブルク家はヨーロッパ各国の力関係を利用し、各国の王家と婚姻関係を結ぶことにより、勢力を獲得していったのである。

 

 自身が王とはならず、あえて王の親族として権力を手にする手法は、わが国の平安時代における藤原氏に近い。

 

 ところで、スペイン=ハプスブルク家から出たカルロス 1 世は、〈カール 5 世〉として、神聖ローマ皇帝をも兼ね、広くヨーロッパを支配した

 

 しかしカルロス 1 世は、広大な領土の維持や統治に忙殺され、治世の大半を費やすこととなる。

 

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カルロス 1 世
借用元 http://spanishmedia.jp/carlos_1/

 

 1556 年、カルロス 1 世が退位すると、ハプスブルク家はスペイン系とオーストリア系に分裂した

 

 スペインは、フェリペ 2 世のときに全盛期をむかえ、1580 年にはポルトガルの王位も兼ねた。

 

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フェリペ 2 世
借用元 http://p.twipple.jp/cyyek

 

 その期間には、スペインはポルトガルの植民地をも支配下に起き、隆盛を誇ったが17 世紀中葉には、オランダやイギリスの攻撃を受け、没落した

 

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スペインの最大領土
借用元 http://matome.naver.jp/odai/2135484685815433301

スペイン国という、中世体制と近代国家の合いの子

 ところでこのことは、すでに「K五代十国-武断主義と近代国家の萌芽、中世的国家の否定」等、多くのページで述べてきた。

 

 基本的に〈中世的国家〉とは、、「多民族共存」、ならびに「一国ではなく、一領域を対象とする」ことが前提である。

 

 それに対し、〈近代的国家〉とは、「一国・一民族」を、基本原理とするものである。

 

 ところがこの点については、若干、注意が必要である。

 

 まず〈近代的国家〉における「一民族」という概念は、建前上では、国民同士が生物的・遺伝的につながりをもつ関係とされる。

 

 ところが実情においては、もっと社会的な意味で、「おなじ宗教や習慣、文化、言語、価値観等を共有する集団」ということになる。

 

 つまり近世・近代における国家は、たとえ現実は、自国の各国民が社会的な集合体にすぎないものをあえて血統上の関係にある同胞、と喧伝したのである。

 

 この典型例が、ナチス・ドイツが唱えた〈ゲルマン民族〉という概念である。

 

 近世・近代の国家は、統治上の必要性から、そのような国民国家〉という共同幻想をつくらざるを得なかったのだ。

 

 そうした観点から見た場合、近世のスペインとは、じつに中途半端なあり方をしている。

 

 当時のスペインは、〈カトリック国〉として、まとまりをなし、〈レコンキスタ〉、〈大航海時代〉を成功させた。

 

 また、そのスペイン国の内実は、もちろんカトリック勢力が主導していたのは、たしかである。

 

 しかしそのなかには、〈レコンキスタ〉の後もイベリア半島に残ったイスラム教徒、ユダヤ人、異邦人等もいたのだ。

 

 こうした状況にあれば、当然に国内を、「国民はすべて同胞」というまとめ方はできない

 

 および、一国内に多民族が共存しているというあり方はじつに「中世的」である

 

 つまり近世におけるスペイン王国とは、王国として成立しつつも国王のもとに、国民を団結させる」近代的イデオロギーに欠けていたのだ。

 

 ここから当時のスペインとは中世的国家から近世的国家への、過渡期的なあり方をした国だったことがわかる。

国王による中央集権体制が、スペインの栄光と没落の両者を生んだ

 以上のことから、見えてくる点がある。

 

 まずたしかに、スペインが〈レコンキスタ〉、「〈大航海時代〉における、海外進出」を成功させたのはいかにも「近代的な」イデオロギーが主因であった。

 

 「イベリア半島をイスラム勢力から、われわれキリスト教徒の手に取りもどす」、「カトリックの教えを、世界中の国々へ広める」。

 

 こうした理念によりスペインという国家はまとまり中世末期から近世初頭にかけての成功を生んだ

 

 しかしそのスペイン国の内情は、多くの民族や集団が共存する、じつに「中世的な」ものであったのだ。

 

 だからスペインは、黄金期にあっても国内の騒乱が絶えずまた国王も国内を強権的に治めようとしたため、火に油を注ぐ結果となった

 

 くわえてスペインは対外的にも、多くの敵をもっていた。

 

 しかし国が一体とならなければ、そうした危機にも対応できない。

 

 したがって、当時のスペインには植民地から、銀をはじめとする財が入ってきていたがそれらはほとんど、戦費や国内統制のために使われた

 

 つまりそうしたは、スペインという国を長期にわたり、繁栄させることはなかったのである。

 

 ここから、以下のことが言える。

 

 スペインの繁栄は、中央集権的王政によりもたらされたのは、事実である。

 

 しかしその没落の原因もまた、その中央集権的王政だ。

 

つまりはスペインは、近代的な中央集権国家に不可欠なナショナリズムを構築できなかったのである。

 

 そうした皮肉な結果を生んだ理由は、スペインの国家体制にいまだ〈中世的〉な部分があったため近世〉の社会に対応しきれなかったからである。

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管理人 水無川 流也