「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

@ルネサンス科学を経て、相対的な認識が可能となった人類 @ルネサンス科学を経て、相対的な認識が可能となった人類

モノ事を、ありのままに見るということ

 これまでのページで述べてきたように、ルネサンスとは人類、あるいは西洋人における、“”と“理性”の開花である。

 

 よって、ルネサンスを経ることにより西洋人は、「理性的なモノの見方」が可能となった。

 

 これが意味するものは、事象を観察するにあたり、先入観を取り払い、「それが存在するかたちのまま」認識するということである。

 

 この点はじつに当たり前のようだが、これができるようになるためには、観察者に「成熟した“理性”」が備わっている必要があるのだ。

 

 まずこのことは、「@人類の誕生 サルからヒトへー進化の仮説と、宗教の起源」のページにおける、「宗教の起源」の章で説明した。

 

 サルから進化ヒトは、あらゆる自然現象を「わかったつもり」にならなければ、共同体の存続が立ち行かなかった。

 

 よって人類は、身のまわりのあらゆることに対し、“直観”により、その原因と結果の因果律を説明しようとした。

 

 その結果、生まれたものが“宗教”である。

 

 したがって、キリスト教により共同体が全面的に支配されていたヨーロッパでは、当然に人々は、万物を“”というフィルターにかけて見た。

 

 このことは、個人における認識の発展段階を見ても、同様である。

 

 小さな子供は、なぜ毎日、太陽が東から昇り、西へ沈むのかを、「実態レベルでは」理解できない。

 

 そこから彼は、幼稚でありながらも、それなりに因果関係を説明できる珍説でもって、現象を把握しようとするのである。

 

 彼が「太陽の運動」を、ある程度は正しく理解できるようになるには、彼の精神がそこそこに発達するまで、待つしかないのである。

 

 これと同様のことが、人類の歴史においても言える。

 

 西洋人は中世の 1000 年間において、たしかに停滞はしていた。

 

 しかしその期間において、西洋人はさまざまな内発的な発展や、外的刺激により現実を現実として」受け入れるほどに成長したのだ。

 

 それが実を結んだのが、〈ルネサンス〉であり、この時期をもって、ヨーロッパの科学は、本格的に開始されるのである。

コペルニクスやガリレオ等による、〈地動説〉概要

 ところでルネサンス期における科学で、もっとも偉大な業績と考えられているのは、〈地動説〉の発見だ。

 

 それまでの中世における天体観は、よく知られているように、地球が宇宙の中心であり、他の惑星が地球の周辺を回っているとする、〈天動説〉である。

 

 〈天動説〉は、『旧約聖書』の〈詩篇〉に記載された、キリスト教元来の世界観をギリシャの天文学者、プトレマイオスの理論で説明したものだ。

 

@ルネサンス科学を経て、相対的な認識が可能となった人類
プトレマイオスの宇宙観
借用元 http://www.astron.pref.gunma.jp/kyozai01/tendou/tendou_top.html

 

 これはキリスト教の教義で述べられている点と、および常識的な見方とも合致することもあり、中世を通じて西洋世界を支配した観念である。

 

 ところが 16 世紀前半に、ポーランドの天文学者、コペルニクスが〈地動説〉を唱えた。

 

@ルネサンス科学を経て、相対的な認識が可能となった人類
コペルニクスの宇宙観
借用元 http://spaceinfo.jaxa.jp/ja/movingheavens_movingearth.html

 

 周知のように〈地動説〉とは、われわれが住む地球もまた、他の惑星と同様に運動をしている、という学説である。

 

 これを記したコペルニクスの書物は、一時的にローマ教皇庁により閲覧禁止とされたが、後に条件をつけることで、閲覧が許されることとなった。

 

 ところが後にコペルニクスの学説を発展させ、発表したイタリアの物理学者、ガリレオは、教会当局から激しく弾圧されることとなった。

 

@ルネサンス科学を経て、相対的な認識が可能となった人類
宗教裁判にかけられるガリレオ
借用元 http://blog.goo.ne.jp/augustrait/e/e5b91abac85b5107a97829b4cf9cd6f1

 

 しかしその後、ガリレオの説の正しさは、近代を通じ、ヨーロッパ世界に受け入れられるようになった。

 

 そしてついに 1992 年には、時のローマ教皇、ヨハネ・パウロ 2 世が、ガリレオに対し、公的に謝罪するまでとなった。

〈地動説〉がもつ、二重の歴史的意義

 さて、このようにして、はじめに異端視されていた〈地動説〉が、世に認められていった。

 

 ところでこの点は、「人類における認識の発展史」という観点から見た場合、2 つの意味がある。

 

 まず第 1 点は、人類が“常識”を超えた“真理”に到達したこと。

 

 次は人類に、「“対自的な”モノの見方」が、可能となった点である。

 

 まず最初の点から、説明する。

 

 一般に“真理”とは〈真・善・美〉の 3 種類があり、人間とは通常、“”、“”、“”の順番で、個の成長にしたがい認識が可能となる。

 

 このことは、「H〈真・善・美〉の意味と、ソクラテスの登場-真理とは?」のページでくわしく述べたので、参考にしていただきたい。

 

 上記ページで語ったように、はじめに“少年”が認識可能な“真理”とは、「善=常識的真理」である。

 

 なぜなら少年とは、“思考”はできないが、「常識的判断」にしたがい物事を分別することが可能だからである。

 

 そしてその少年が“青年”となったとき、思考”によって“真理”を把握できるようになるのだ。

 

 一般に、ある物事を見る場合、「常識的に」判別するのと、「思考して」観察するのでは、結果がまったく異なる

 

 それは、〈地動説〉で焦点となる、「天体の運動」などを考えれば、すぐに理解できる。

 

 まず普通に生活していれば、われわれは「地球が動いている」などとは感じられない

 

 どうしても、太陽ががつねに東から昇り、西へ落ちるように、天体のみが動いているとしか、考えられないであろう。

 

 これが、常識的な判断であり、また常識的な真理である。

 

 ところが、惑星の運動を「ありのままに」、緻密に正しく観察をすれば、どうしても地球が動いている」=〈地動説〉の結論に達せざるを得ないのだ。

 

 これが本質的な真理であり、またこの実相に到達できるのは、〈思考力〉をもった者のみである。

 

 この点から、ルネサンス期において人類が認識する“真理”の質が「常識的なもの」から「思考的(本質的)なもの」に移ったことがわかる。

 

 つまりここから、人間の認識能力は、“少年”のものから、“青年”のものへと発展したのである。

 

 この点はまさに、ルネサンスとはまさしく、人類における「青年期の初頭」に該当していることを、証明している。

〈他者〉を認めることができるようになった、西洋人

 さて、次に前章で述べたように、人類、および西洋人に「“対他的な”モノの見方」が可能となったとは、どういうことかを説明する。

 

 まず〈対他〉とは哲学用語であり、これは「他者をつうじて、自己を知る」ことを意味する。

 

 はじめに少年とは、自分以外の〈他者〉を、認識できないものである。

 

 とくに彼が幼いほどに、彼の意識は「自分」しか把握できず、「他者」や「世界」は、あくまで「自分」の延長として捉えてしまうものだ。

 

 その理由は、彼の認識構造がいまだに単一的なものであるため、当然に自分にとってのすべての“外界”を、「自分の一部」として把握するからだ。

 

 ところが少年も成長していくにつれ、以下のような“気づき”を得るようになる。

 

 それは、「自分以外の他人も、自分と同様の“意識”をもっているのではないか」という理解である。

 

 すなわち、「他者も自分とおなじ精神性をもっておりその点では、他人から見れば、自分も“他人”ではないか」と、感得するようになるのだ。

 

 つまり「他者をつうじて、自己を再発見する」のである。

 

 このようにし、少年の認識は、年を経るごとに、複合的になっていくのだ。

 

 そうした観点から〈地動説〉を見ると、人類は〈地動説〉をつうじ、以下のことを知るようになったと言える。

 

 それは、「われわれが住んでいる地球とは、宇宙における不動の絶対的中心ではなく他の惑星と同様の、惑星だ」である。

 

 〈地動説〉の発見を、人間の認識発展史に当てはめれば、上記のような解釈が可能なのだ。

 

 これを一言で述べるならば、人類はルネサンス期に入り、ようやく物事を「相対的に」分別できるようになったのだ。

 

 ここを逆に言えば、人類は、〈青年期〉に足を一歩踏みこんだからこそ地動説〉に気づいたのである。

 

 この点からもまた、ルネサンスとは「人類の思春期」であることが理解できる。

 

 なお、それとは別にルネサンス期には、一般に「ルネサンスの 3 大発明」と呼ばれる、“火薬”、“羅針盤”、“活版印刷”の発展があった。

 

 これらの技術は、後のヨーロッパ文明をおおいに飛躍させることとなるのだが、この点については、下記の 2 ページですでにくわしく述べているので、参考にしていただきたい。

 

 N中国4大発明と、中国社会の近代性、特殊性、限界性

 

 N技術革新に見る、中国近代はいかにして西洋近代に敗れたか

関連ページ

@ルネサンスの本質とは、人類の思春期、性と理性の開花
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
@ルネサンス美術-絵画・彫刻に現れる、立体性というエロス
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
@ルネサンス文学-小説の誕生と、自我で行動する主人公たち
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
A宗教改革の原因、経緯と、その結果との信じがたい隔たり
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
A“信仰”とは、西洋近現代における最強の〈免罪符〉である
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Aプロテスタントの影響と西洋諸国-神秘性と現実主義が混在
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
A対抗宗教改革で現出した、カトリックとラテン民族の本質
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Bレコンキスタ-大航海時代に内部爆発する、西洋世界の原点
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
B西洋が大航海時代に入った究極要因−寒冷化、肉食、香辛料
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
B西洋人の近世における征服・植民活動は、なぜ成功したのか
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
B「世界の一体化」-大航海時代の結果がもたらしたものは?
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
B「日の沈まぬ国」スペインの、繁栄と没落の原因は同一
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Bオランダの独立とイギリスの進出-なぜ新教時代は花開いたか
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Bなぜ近世にプロテスタントはカトリックを、逆転できたのか
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
Cイタリア戦争-争いと寒冷化をつうじ、〈主権国家〉を現出
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
しばらく休止
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。
重要なお知らせ
複雑で難解と思われる世界史を、88の事象に分類し、その出来事を示す格言・名言により説明します。内容は本質的でありながら、たいへんにわかりやすいです。日本史をふくめた全世界史を、哲学的方法論でもってひとつにまとめています。

管理人 水無川 流也