「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

@ルネサンスの本質とは、人類の思春期、性と理性の開花 @ルネサンスの本質とは、人類の思春期、性と理性の開花

近世とは何か?

 ○画家は万能でなければ賞賛に値しない。画家は「自然」を師としなければならぬ―ダ・ヴィンチ

 

 

 

 このページからは、〈近代〉の入り口である、〈近世〉について語る。

 

 まずその「近世」とは何かと言えば、これは人類の歴史を個人の人生に置き換えれば、ずばり〈思春期〉そのものということになる。

 

 そもそも、近世以前の時代である、〈中世〉とは、人類の少年期に該当するということは、以下の箇所ですでに述べた。

 

 それは「@西洋中世文化という少年期-“聴覚”の重要性」のページ全体や、「Hイスラム文学から読み解く、中世世界-聴覚優先」のページにおける最終章、「なぜ、イスラム文学に“小説”はないのか」等である。

 

 よって中世が終焉することにより、〈近世〉を迎えた人類は、少年がまず“大人”になるための第一段階、「性と自我の目覚め」を経験するのだ。

 

 その時期こそが、〈ルネサンス〉に該当する。

ルネサンス概要

 まずルネサンスとは、およそ 14 世紀から 16 世紀にかけ、おもにイタリアで興った文芸復興運動である。

 

 「ルネサンス」とは、フランス語で「再生」を意味する語である。

 

 はじめに中世のヨーロッパとは、社会から国民の生活まですべて、キリスト教(カトリック)により、規定されていた。

 

 当然ながら、そのなかにおけるあらゆる文化活動は、ほぼキリスト教由来のものしか存在しなかった。

 

 ところでルネサンスとは、そうした中世の文化を継承しながらも、広く人間性を表現しようとする芸術様式である。

 

 よってそこには、キリスト教のみにとらわれない、古代ギリシャやローマの神話などをモチーフにした作品が多く生まれた。

 

 ではなぜ、そうした運動がイタリアで発生したかといえば、以下のような理由からである。

 

 まず当時のイタリア、とくにフィレンツェは、地中海貿易で栄えていたため、多くの富や情報が、おもにイスラム教圏から入ってきた。

 

@ルネサンスの本質とは、人類の思春期、性と理性の開花
現代のフィレンツェ ルネサンス期の面影が残る
借用元 http://wadaphoto.jp/kikou/carnival3.htm

 

 とくにそのときのイタリアは、香辛料を独占できていたため、それが富の集中につながった。

 

 またそのなかの輸入品には、古代ギリシャやローマにかんする文物も多く含まれていた。

 

 そうした理由から、当時の貿易活動において富を蓄えた富豪やローマ教皇が、フィレンツェにおいて多くの芸術家たちのパトロンとなったのである。

 

 次に当時のヨーロッパにおける隣国、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)が、本格的な衰退期に入っていたのも、大きな要因である。

 

 それによりギリシャ語の文献や、ギリシャ・ローマの文化に造詣の深い学者たちがイタリアにやって来たからだ。

 

 また最後の理由として、イタリアという土地そのものが、かつて古代ローマ帝国の中心地だったということが挙げられる。

 

 イタリアではまわりを見渡せば、ローマ時代の遺跡がいくらでも目に入る。

 

 よって富豪やローマ教皇たちが、そうしたものの根源に関心をもつのは、きわめて自然なことである。

 

 こうした条件が整い、中世末期のイタリアにおいて、〈ルネサンス〉は開花されていった。

〈視覚優先〉に見られる、“理性”の目覚め

 さて、この点の具体的なあり方は、後のページで詳細に述べる。

 

 まずルネサンスにおける芸術作品を見渡せば、その代表作は圧倒的に、彫刻や絵画などの、いわゆる〈視覚芸術〉が多いことがわかる。

 

 世間一般でイメージされる「ルネサンスの作品」とは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」や、ミケランジェロの「ダヴィデ像」などであろう。

 

 つまりは、ルネサンス芸術とは端的には、視覚美術によって構成されているとも言えるのだ。

 

 ところで再度、「@西洋中世文化という少年期-“聴覚”の重要性」のページを見ていただきたい。

 

 はじめに〈中世〉とは、“聴覚”の時代であり、それゆえに中世とは、「少年の時代」だということは、すでに述べた。

 

 聴覚とは受動的かつ感性的な感官であるため、ひたすら他者により教化される時期である少年期には、主体となる感覚なのである。

 

 ところがひるがえって、“視覚”はどうか?

 

 これは聴覚とは対照的に、能動的かつ理性的な能力である。

 

 たとえばまず、人は基本的に“”を選んで聞くことはできない。

 

 どんな音であろうと、手で耳をふさぎでもしないかぎり、否応なく耳には入ってきてしまう。

 

 つまり音を感知する聴覚に、取捨選択の能力はなくよってこの時点で、聴覚とは受動的な器官だと言うことができる。

 

 その反面、“視覚”は能動的である。

 

 なぜなら人は、イヤなものならば目をそらすか、あるいは目を閉じるかすれば見なくてすむからだ。

 

 また、じっと見たいものについては凝視できるし、視覚の範囲内であれば、自在に見るものを選べる

 

 ところで聴覚とは、「人の話を聴く」ときに用いられるときは、おもに感性・感情に働きかけるものである。

 

 ならばそれとは対照的に、視覚を通じるなされる行為、「目で見る」ということは、「文字を読む」、「風景から状況を判断する」等、理性的な働きをなすものが多い。

 

 くわえて理性という認識能力がもつ機能の一つに、「複数存在する選択肢のなかから、特定の対象を考えたうえで、選びとる」というものもある。

 

 こうした点から、視覚とは能動的かつ、理性的な感覚器官だということが理解できる。

 

 よって、近代の初頭である近世に、「視覚優先」の文化である〈ルネサンス〉が開花したということは、近代という時代が能動的かつ理性的なものだという証拠である。

 

 これを個人の一生に該当させると、まさに思春期ということになる。

 

 なぜなら人は、思春期になり自我が充分に発育することで、「認識が大人に向かう」という経験をするからだ。

 

 この点では、「少年」とはまず親や教師によりずっと一方的かつ受動的に“教育“される存在だ。

 

 その少年がはじめて「自分の意志」により、事象を主体的に選択するようになったということである。

 

 こうした個人に対して起こることが、人類の歴史のなかで発生した。

 

 それが〈ルネサンス〉である。

 

ルネサンスに見る、「性の目覚め」

 この点についての、具体的な個々の作品に現れているモチーフについては、後のページで述べる。

 

 まずルネサンス芸術における、もっとも重要なテーマは、「性の目覚め」である。

 

 ルネサンスという歴史現象が、「理性の覚醒」を意味するなら、同様にそれは、「性の目覚め」も意味する。

 

 なぜなら「理性の覚醒」も、「性の目覚め」も両者同様に、個の人間における人生で見た場合、“思春期”に起こる事象だからである。

 

 ルネサンスが人類の思春期であるならば、当然にこうしたことは、ルネサンス芸術にも反映されている。

 

 これは人間の人生では、「第二次性徴期」であり、具体的に述べるならば、12 〜 14 歳くらいである。

 

 よってルネサンス以後の芸術や哲学は、極度に“”と“理性”に傾いていくこととなる。

 

 だがもちろん、“性”も“理性”も、キリスト教の観点からすれば、望ましくないものだ。

 

 なぜならキリスト教とは、「神への絶対信仰」を重んじ、かつ聖母マリアの〈処女懐胎〉に見られるように、“禁欲”を信者に課す宗教だからである。

 

 だからもし信徒たちが、物事を理性的に判断し、かつ“性”に対し開放的になれば、もちろんキリスト教の教義は成り立たなくなってくる。

 

 しかしそもそも、ルネサンスという現象自体が、キリスト教の共同体が充分に成熟した結果として、生まれた必然である。

 

 こうしてこの後の西洋史は内面からあふれる“理性”、“”と、外側からこれを抑えつけようとする、“教義”との対立の歴史となっていく。

 

 この点を通俗的な例で説明すれば、以下のようになる。

 

 どこの家庭でもそうであるが、息子が思春期をむかえると“性”と「“理性”=自己判断」に目覚め、「親の言いつけ=“教義”」を守らなくなってくる。

 

 するとますます親は「倫理的に」、息子を教育しようとするため、息子はますます反抗的になる。

 

 こうしたどんな家庭でも起こり得る「親子の葛藤」が、その後の歴史において展開されるのが、〈西洋近現代史〉である。

 

 ただ通常の家庭と、西洋社会が異なる点は、以下のことである。

 

 一般家庭においては、子供は反抗期を経ながらも、やがて“”を相対的に見られるようになり、自立していく

 

 ところが西洋社会においては、“親”に該当する“”が、絶対的な支配者として存在するため「子の自立」は、建前として永遠に許されない

 

 しかしそれでも、「“子”=“人類”」は成長していく。

 

 こうした矛盾が存在するため近現代という時代は、じつに歪んだかたちで展開されていくことになるのだ。

 

 この点については、今後のページでくわしく述べる。

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管理人 水無川 流也