「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

@ルネサンス美術-絵画・彫刻に現れる、立体性というエロス @ルネサンス美術-絵画・彫刻に現れる、立体性というエロス

ルネサンス美術の特徴

 ルネサンスとは、近世初頭ヨーロッパで興った芸術復興運動全体を指す。

 

 よってこの時代に生まれた音楽や建築、文学なども、「ルネサンス」の範疇に入る。

 

 しかしやはり、もっともルネサンスを代表する芸術と言えば、絵画や彫刻などの美術が挙げられるであろう。

 

 これは、ミケランジェロの「ダヴィデ像」、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」、ボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」等を見れば、すぐに理解できる。

 

 なぜなら通常の人間が「ルネサンス」と聞いて、すぐに思い浮かべるのは、上記のような作品であるからだ。

 

 さてでは、これらの創作品が共通してもっている特質とは、何か?

 

 これはずばり、“立体性”である。

 

 たとえば絵画では、15 世紀前半に遠近法が確立されたことにより、2 次元のキャンバスに立体感をもつ人物や風景が、描かれることとなった。

 

 彫刻もまた、同様である。

 

 ミケランジェロの一連の作品、「ダヴィデ像」、「ピエタ」等も、この立体感により、作品に写実性をあたえている。

 

 この点は、中世の絵画や彫刻と比較すれば、一目瞭然である。

 

 中世の芸術作品は、極度にこの立体性に欠けており、また表現技法の問題もあろうが、ルネサンス芸術に比べると、きわめて稚拙に見える。

 

 では、この〈立体性〉の正体とは、一体、何にもとづくものであろうか?

 

 

@ルネサンス美術-絵画・彫刻に現れる、立体性というエロス
ルネサンスを代表する画家、ラアフェロによる「聖母子像」
借用元 http://ayapandafuldays.blog.so-net.ne.jp/2012-05-11

 

@ルネサンス美術-絵画・彫刻に現れる、立体性というエロス
中世に描かれた「聖母子像」
借用元 http://blogs.yahoo.co.jp/flowinvain/19761816.html

 

 

上記 2 つの絵画を見比べれば、おなじテーマをあつかっているのに、「立体性」に極端な差があることがわかる。

ルネサンス芸術の立体性とは、肉体性、すなわちエロス

 まずルネサンス芸術にける〈立体性〉がおもに表現しているのは、何か?

 

 それはずばり(肉体性〉であり、すなわち、エロティシズムである。

 

 前のページで、ルネサンスとは人類の第二次性徴期、すなわち思春期だということは、すでに述べた。

 

 つまりこれを個の人間における人生でとらえれば、“少年”が“青年”へと向かう第一歩目である。

 

 そして“少年”と“青年”を分け隔てる、外見上の性質とは何か?

 

 それこそまさに、“肉体”をもっているか、どうかである。

 

 少年は筋肉を帯びていないが、彼が「若い大人」である青年になるにつれ、身体には筋肉がついてくる

 

 またこの点は、女性も同様である。

 

 少女も初潮をむかえたあたりから、乳房や臀部にふくらみを帯びるようになり、やがて大人の女性へと成長していく。

 

 こうした肉体の変化にもとづき、少年や少女の身に起こるのは、「性行為が可能となること」、つまりは「色気づく」ということである。

 

 少年は精通を、少女は初潮を経験することにより、彼らの肉体・認識・両面において、明確な変革が訪れる。

 

 それこそがまさに、“性欲”の発現である。

 

 彼らは肉体上でも精神上でも「異性が欲しい」という感覚を経験する。

 

 これはじつに、少年・少女が大人の男性・女性に向かっているということである。

 

 そしてルネサンスとは、まさしく人類”自体が、その時期に突入してきた時代を表すのである。

 

 したがって、ルネサンス美術に顕著に見られる“肉体性”とは、その時代における人類の認識状態を、表現したものであると言える。

 

 ちなみにルネサンス以前の、中世における人類の認識、および芸術のあり方は、どういうものだったか。

 

 こちらは、「@西洋中世文化という少年期-“聴覚”の重要性」のページや、「Aビザンツ帝国の人民抑圧を正当化する、ギリシャ正教」のページにおける最終章、「〈イコン〉〈モザイク壁画〉という、中世的美術」などを参考にしていただきたい。

純粋芸術の成立と、作者名が明記されるようになった意義

 このこともすでに、多くのところで述べてきた。

 

 ある芸術作品が、「近代芸術」と呼べるか、あるいはそうした芸術を生み出した社会が「近代社会」と言えるかは、以下の点が基準となる。

 

 それは、その作品が宗教を離れ真に鑑賞のみを目的とした〈純粋芸術〉であるか、というところ。

 

 もう一点は、そうした創作物に、作者名が明記されているか、というところである。

 

 まず〈純粋芸術〉について説明すれば、以下のようになる。

 

 そもそも視覚であろうが聴覚であろうが、あらゆる芸術の起源は宗教にある。

 

 もちろん人類は、アニミズム的な原始宗教を生み出す前から、「落書きをする」、「声や道具を使って、音を出す」くらいのことは、できたであろう。

 

 ところが芸術とは、簡単に定義してしまえば、以下のようになる。

 

 「一定の技術と様式にしたがい、表現・創出された“

 

 だとするならば、宗教以前の“芸術”には、こうした“体系性”がないのである。

 

 よってあらゆる芸術は、宗教により規定されはじめて芸術たりえたのだ。

 

 その観点から述べると、〈近代〉とは基本的に、どのようなものであれ、文化や制度が“宗教”から切り離された時代である。

 

 したがって、宗教性”を帯びずに、純粋に成立する芸術こそが、〈近代芸術〉と呼べるのである。

 

 この点から述べるならば、たしかにルネサンスの絵画や彫刻は、教会に属したものもあるので、完全無欠の〈近代芸術〉とは言えないかもしれない。

 

 しかし、ダ・ヴィンチの「モナリザ」や、ボッティチェリの「ヴィーナス誕生」におけるテーマは、キリスト教由来のものではない

 

@ルネサンス美術-絵画・彫刻に現れる、立体性というエロス
「モナリザ」 あくまで一個人をモデルにしている
借用元 http://gigazine.net/news/20101214_mona_lisa_code/

 

 

@ルネサンス美術-絵画・彫刻に現れる、立体性というエロス
「ヴィーナスの誕生」 ギリシャ神話をモチーフにしている
借用元 http://www.wallpaperlink.com/bin/0701/03046.html

 

これらは純粋にパトロンが鑑賞を楽しむものでありまたキリスト教とは異なる宗教を主題としている

 

 よってこうした作品が属するルネサンス芸術とは、キリスト教から自由になれている、つまり条件つきで「近代芸術」と呼べるのである。

 

 さて、次は「作者名」の問題である。

 

 これもまた同様に、前近代社会においては作品の作者が問題となることはない

 

 なぜなら、そうした社会においては、“個人”は(宗教)共同体のなかに埋没しているため、“”という概念が発生しないからである。

 

 このことについては、「K唐代芸術の近代性と、純粋芸術の成立-書、山水画 等」のページにおける冒頭章、「芸術作品に作者の名が冠せられる、中国文化の先進性」を見ていただきたい。

 

 このことを示す証拠として、中世ヨーロッパ、あるいは中世イスラム社会における芸術作品のなかではっきりと作者名が明確になっているものは、ほとんどない

 

 前近代社会で芸術が意味をもつのは、それをもって特定の宗教で、共同体に統一性をもたらす場合のみである。

 

 それはたとえば、絵画で“神”の姿を描いたり、みなで賛美歌を歌い、一体感を得たりする場合がそれに該当する。

 

 そうした点から、そのような社会では、その作品はだれがつくったかはまったく意味をなさないのだ。

 

 なぜならすべての芸術は、共同体のみのものであるからだ。

 

 こうした観点から見れば、芸術家個人の名前が上がる時代とはすなわち芸術が宗教から独立していることを意味する

 

 つまり、ダ・ヴィンチやミケランジェロ等の偉大な創作者の名が歴史に刻まれているルネサンスとは、すでに〈近代〉であることの証明だ、ということである。

近代性を表す、“パトロン”という存在

 最後にもう一点、ルネサンスを〈近代文化〉たらしめているものが存在する。

 

 それはルネサンスの巨匠、ダ・ヴィンチやミケランジェロのパトロンとなった〈メディチ家〉である。

 

 メディチ家は、イタリア・フィレンにおいて東方貿易や金融業等、じつに「近代的な」稼業により財をなした富豪だ。

 

 そのメディチ家やミラノ公、ローマ教皇、および各国の国王が芸術家を保護して生まれたのがルネサンスである。

 

@ルネサンス美術-絵画・彫刻に現れる、立体性というエロス
メディチ家最盛期の当主にして、多くの芸術家のパトロンとなった、ロレンツォ・デ・メディチ
借用元 http://renessance.jugem.jp/?eid=179

 

 ところで特定の保護者のもとで、その者の注文にしたがい作品を製作するということは、これは完全な「芸術の私有化」である。

 

 前章で述べたように、前近代社会では芸術作品の作者名が意味をなさないのと同様、それをだれがつくらせたか、ということも問題にならない

 

 その理由は言うまでもなく、そうした社会にあっては、あらゆる芸術品は共同体という“のみのものだからである。

 

 ここから、作者という“”が表出することが、〈近代社会〉の条件である。

 

 よってならば当然に、パトロンという“私”が現れたということもまた、その社会の“近代性”を裏づけているということになる。

 

 このように、作品の作者製作依頼者、および鑑賞者がすべて“”であるからこそ、ルネサンスは〈近代芸術〉なのである。

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管理人 水無川 流也