「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

Bレコンキスタ-大航海時代に内部爆発する、西洋世界の原点 Bレコンキスタ-大航海時代に内部爆発する、西洋世界の原点

○零から壱を創るのは、難しい。一から二を作ることは、易しい―コロンブス

世界史に見る、レコンキスタに似た現象

 この章で取りあげる〈レコンキスタ〉とは、現在スペインやポルトガルが存在するイベリア半島において、11 〜 15 世紀にかけておこなわれた運動である。

 

 イベリア半島は中世の初期から、〈後ウマイヤ朝〉というイスラム王朝により、支配されていた。

 

 それをキリスト教徒たちが、「国土回復運動」として、イスラム勢力を駆逐していったのが、〈レコンキスタ〉である。

 

 このレコンキスタが歴史上でもつ意味はイベリア半島がキリスト教徒の手に落ちたということだけではない

 

 レコンキスタの末に生まれたスペイン、ポルトガルといったカトリック勢力は、その後の全ヨーロッパ諸国に先がけ、〈大航海時代〉に突入した。

 

 言うまでもなく〈大航海時代〉において、世界中にキリスト教や西洋文化が広がり、かつ、世界の領土がヨーロッパ諸国の植民地となっていったのである。

 

 こうした現象を見ると、レコンキスタ〉により爆発したエネルギーがそのまま海外進出の原動力となっていったのがわかる。

 

 ところがこうした出来事は、世界や日本の歴史においてもひんぱんに見られるものである。

 

 例を挙げれば、古代ギリシャ世界を征服した後に、全世界制覇におもむいたアレクサンダー大王の帝国。

 

 モンゴル高原から出て、中国を支配した勢いのまま、世界を制覇したモンゴル帝国。

 

 あるいは日本統一を果たした後、朝鮮出兵を経て、大陸支配に乗り出した豊臣秀吉などが、存在する。

 

 よって、狭い地域を制したエネルギーが、ビッグバンのように、そのまま外部進出へと向かう現象自体は、歴史上では普遍的に見られるものである。

 

 ところが、西洋世界による〈大航海時代〉時代とは、以下の点に特徴がある。

 

 まずアレクサンダーやモンゴル人による〈帝国〉は、怒涛の勢いで拡がったがその分、瓦解するのも早かった

 

 しかし〈大航海時代〉を経てからの西洋諸国はその後、近現代をつうじて数百年ものあいだ、世界支配を続けた

 

 それだけではなく、西洋近代が生んだ、政治的・経済的・社会的制度などは、現在の国際社会においても、普遍的なシステムとして、定着している。

 

 それはたとえば〈議会制民主主義〉や、〈資本主義〉等である。

 

 では、その大航海時代の呼び水となった〈レコンキスタ〉は、どのようなものだったのか、見てみる。

レコンキスタの経緯

 まず 8 世紀に、西アジアにおいてイスラム教の大国、ウマイヤ朝は、おなじくイスラム教の王朝、アッバース朝に滅ぼされた

 

 ウマイヤ朝の一族はその後、イベリア半島に逃げのび、そこで 756 年後ウマイヤ朝〉を建国した。

 

Bレコンキスタ-大航海時代に内部爆発する、西洋世界の原点
中世における、イスラム諸国
借用元 http://www12.plala.or.jp/rekisi/abba-zu.html

 

 後ウマイヤ朝の首都、コルドバは、イスラム文化の中心地として栄え、同国内のキリスト教徒たちは、税さえ納めれば、信仰の自由は保証された。

 

Bレコンキスタ-大航海時代に内部爆発する、西洋世界の原点
首都コルドバに栄える、大宮殿
借用元 http://4travel.jp/travelogue/10992764

 

 よって、イスラム教徒に対して抵抗するキリスト教徒は 8 世紀から一定数、存在したが、大部分の国民は、平和裏に共存できていた

 

 しかし後ウマイヤは、1031 年に滅び、複数の国家に分裂した

 

 これよりキリスト教徒による「〈レコンキスタ〉=国土回復運動」は、本格化していった。

 

 その後、イベリア半島のイスラム王朝はたがいに争うようになりそれにつけこむように、キリスト教徒の勢力は増していった

 

 それというのも、当時のイベリア半島におけるキリスト教徒たちは、ローマ教皇やフランスなどからの支援も得ていたからである。

 

 そのなかで、スペインとポルトガルが国力と国土を広げていき、1492 年には、イスラム教徒の最後の拠点、グラナダが陥落した

 

 こうしてレコンキスタは、完成された

イスラム教勢力が衰退した理由

 さて、ところで上述したように、イベリア半島においてキリスト教勢力がチカラをもてた要因のひとつに、後ウマイヤ朝の衰退、分裂がある。

 

 この事象ははたして偶然なのであろうか?

 

 まず結論から述べれば、そうではない

 

 後ウマイヤ朝の衰退期である 10 〜 11 世紀とは、世界中で〈中世的王国・帝国〉が衰え滅んでいった時期なのである。

 

 くわしくは、下記、「K五代十国-武断主義と近代国家の萌芽、中世的国家の否定」のページを参考にしていただきたい。

 

 まず端的に述べるならば、典型的な中世的国家というものは国王が宗教的権威でもって、多民族を一括支配するというものである。

 

 ところが中世の中期以降になると国王は宗教的権威だけでは、一国を統治できなくなってくる

 

 なぜなら、王国領域内において、“権威”という花ではなく、“生産力”、“武力”といった実をもつ集団が現れてくるからである。

 

 そうした実力者たちが、自分たちも王に等しい“権威”があると主張すれば、国王はこれに抵抗できない

 

 そのようなわけで、史上最大のイスラム帝国であるアッバース朝では、10 世紀には国内の分裂が始まった。

 

 また中国の国際王朝でもある唐は、907 年に滅びている。

 

 さらにはわが国においては、10 〜 11 世紀という時代は、藤原氏による摂関政治の時代であった。

 

 藤原氏は天皇家の権威に寄生しながら、〈荘園〉という生産力を確保していたため、政治の実権を掌握できたのである。

 

 上の章で述べたように、イベリア半島を支配していた後ウマイヤ朝もまた、1031 年に滅亡・分裂している。

 

 つまりはイベリア半島における情勢もまた世界のあり方と密接に関わっていたのだ。

 

 後ウマイヤ朝の国王も、他の国の国王と同様にカリフ〉という宗教的指導者というだけでは、通用しなくなったのである。

スペイン、ポルトガル成立がもつ意味

 さて、そうして後ウマイヤ朝、および、そこから分裂したイスラム教国が弱体化したことにより、イスラム勢力はイベリア半島から追放された

 

 それに替わり、スペイン、ポルトガルというカトリック教国家が15 世紀後半からイベリア半島を支配するようになった

 

 この事実もまた、中世国家の衰退と同様に歴史的な必然性を帯びた事象なのである。

 

 まずこれと同時代の、14 〜 15 世紀には、中国では明が 1368 年に成立した。

 

 また西アジアではオスマン・トルコが 1453 年にビザンツ帝国を滅ぼし、当地の支配を確立させた。

 

こうした大国が共通してもつ性質とは、〈近代国家〉であるという点だ。

 

 この場合、〈近代国家〉の条件とは、基本的に 1 国 1 民族の原理で成り立ちくわえて国民が“定住民”であると前提をもつ点である。

 

 ここが、典型的な中世帝国だった、イスラム王朝であるアッバース朝や、中国・唐と異なるところだ。

 

 また、その後にヨーロッパや世界で隆盛した国家はほとんどがそうした特徴により成り立っている

 

 つまりここから、スペイン、ポルトガルの権勢がイベリア半島において確立されたということは、「〈近代国家〉成立」の先がけとしての意味があるのだ。

レコンキスタの歴史的意義

 では最後に、〈レコンキスタ〉にどのような歴史的意義があったかを述べる。

 

 これは端的には、中世〉をつうじて、ずっとイスラム勢力をはじめとする東洋世界に圧倒されていた〈西洋〉が東洋に一矢を報いたという点にある。

 

 その後の時代である〈近代〉は、逆に西洋が東洋を、一貫して支配する時代となる。

 

 レコンキスタとは、そうした〈近代〉の初動と見ることができる。

 

 その点では、〈十字軍〉によるアラブ侵略と同等のものと位置づけられるであろう。

 

 くわえて、こうした西洋と東洋の力関係逆転の図式は、近代初頭のみに見られるものではない。

 

 これと似た現象はじつは古代にも発生しているのである。

 

 この点は、「G古代ギリシャ-西洋世界が史上はじめて、東洋帝国を破る」のページにおける、「ペルシア戦争勝利がもつ意味」の章をご覧いただきたい。

 

 古代においては、紀元前 449 年に、ギリシャの連合軍が当時、世界の最強国家であったアケメネス朝ペルシャを破った。

 

 それまでギリシャをはじめとする西洋世界とは、ずっと東洋の大国に圧倒されっぱなしだったのに、である。

 

 その後の古代世界は、アレクサンダー大王の遠征やローマ帝国の成立などに見られるように、西洋が主導していくこととなる。

 

 この点はじつに中世から近代にかけてのヨーロッパとアジアの関係性に類似している

 

 ここから〈近代〉とは、中世〉を経て洗練化された〈古代とも言えるのである。

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管理人 水無川 流也