「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

B西洋人の近世における征服・植民活動は、なぜ成功したのか B西洋人の近世における征服・植民活動は、なぜ成功したのか

あまりに順調にコトが運んだ、西洋人による初期の植民活動

15 世紀末から始まったヨーロッパ諸国による、アジア・アメリカ新大陸への進出は破竹の勢いで達成された

 

 このことは、だれもが常識として知る事実である。

 

 ところがヨーロッパとは、中世の 1000 年間をつうじイスラム勢力やモンゴル人などの東洋世界に、つねに脅かされる存在であった

 

 そうしたヨーロッパに住む人たちは、なぜ〈大航海時代〉をむかえるとともに、いとも容易に世界の征服者となれたのであろうか?

 

 その勢いの根源と、西洋人による植民活動の本質は、どこにあったのか?

 

 この点をまず、ヨーロッパ世界の拡大における歴史を概略し、考察する。

「大航海時代の歴史」 概要

 前のページ、「B西洋が大航海時代に入った究極要因−寒冷化、肉食、香辛料」では、ポルトガルが大航海時代を先駆けることができた理由を「大航海時代の端緒」以下の章で説明した。

 

 そのポルトガルにおくれて、次はスペインが、大航海時代の主役となった。

 

 1492 年、イタリア・ジェノヴァ出身の船乗り、コロンブスが、スペイン女王のイザベルの支援を受け、〈インド〉に向かい、出発した。

 

 目的は〈インド〉における香辛料や富の獲得、もしくは「黄金の国・ジパング」に、あわよくば、到達することであった。

 

 コロンブスは、地球が球形であるとの説を信じ、大西洋を西進することで、アジアに出られると考えた。

 

 ところがコロンブスが実際に到着したのは、現在の〈西インド諸島〉、および〈アメリカ大陸〉であった。

 

B西洋人の近世における征服・植民活動は、なぜ成功したのか
コロンブスの航路
借用元 http://sky-lark.jp/A2_1.htm

 

 その後、カブラルやアメリゴ・ヴェスプッチらの冒険家たちの活動により、「新大陸アメリカ」の存在が明らかとなった

 

 また、1519 年には、マゼランの船団が、史上初の世界周航を成し遂げた。

 

B西洋人の近世における征服・植民活動は、なぜ成功したのか
マゼランの航路
借用元 http://atlas.cdx.jp/history/voyage.htm

 

 その後は、1521 年には、コルテスアステカ王国を破り、メキシコを征服し、次いで 1533 年にはピサロがインカ帝国を滅ぼし、南米西岸を手に入れた

 

 それ以降のスペインは、残虐をきわめる方法でアメリカ大陸の先住民を駆逐し、同地における勢力を拡大させていった。

技術革新による、兵器の発達

 さて、そのようにスペインが圧倒的な勢いでアメリカ大陸を制することができた要因は、まずなんといっても、彼らが〈近代兵器〉をもっていたからである。

 

 〈近代兵器〉とは、この場合もちろん、銃や鉄砲を指す。

 

 もちろんこうした武器で欠かせないのは、〈火薬〉であるが、西洋人は中国から伝わった火薬を、すさまじい早さで兵器に応用した。

 

 どうしてヨーロッパでは、そうしたことが可能だったのか。

 

 その理由はN技術革新に見る、中国近代はいかにして西洋近代に敗れたかのページで、述べたとおりである。

 

 ヨーロッパは中国と異なり宗教(キリスト教)に支配されてきた期間が長い地域である

 

 一方、中国は、宗教性がきわめて希薄であったため、歴史の最初から〈近代〉が、実現されていた。

 

 ところがヨーロッパにおいては、文明の内的発達により、文明自体が成長しやがて〈近代〉をむかえることとなる

 

 したがって中国では、はじめから〈近代〉が存在していた代わりに、その社会には発展性がない

 

 それに反しヨーロッパは、宗教時代である〈中世〉のあいだに近代〉へのエネルギーが蓄積されていた

 

 その結果、西洋社会においては、いったん〈近代〉が現実化されるとその文明・文化の質は、爆発的に向上したのである。

 

 そうしたわけで、ヨーロッパでは当然に、〈近代〉をむかえると、兵器の質も劇的に向上しアメリカ大陸の先住国家を圧倒したのである。

 

 また、スペインという国自体にも、この事実は該当する。

 

 このことは、「Bレコンキスタ-大航海時代に内部爆発する、西洋世界の原点」や、「B西洋が大航海時代に入った究極要因−寒冷化、肉食、香辛料」のページで述べた。

 

 スペインとは、ポルトガルとともにイベリア半島に中世をつうじて君臨していたイスラム勢力を駆逐したレコンキスタ)。

 

 よってスペインはポルトガル同様レコンキスタのエネルギーがそのまま外洋へと向かったのである。

 

 海外進出についてスペインは、たしかにポルトガルに遅れをとった。

 

 しかしスペインは、国土や国力がポルトガルより強大でありかつ産業基盤なども、比較的に安定していた

 

 よってスペインは結果的には、後代になるとポルトガルより、多くの植民地を獲得できたのである。

古代中南米国家は、文明法則にしたがい、すでに衰退していた

 さてでは、スペイン人によるアメリカ大陸への侵略行為が、なぜ驚異的なまでに迅速になされたのか。

 

 今度は、征服した側ではなく、征服された中南米のインカ帝国やアステカ帝国の事情を見てみる。

 

 この点については、「Rアメリカ先住民たちの、近世以降の運命−融合か隔離か」のページにおける冒頭章、「南北アメリカ文明は、なぜ滅びたか?」を参考にしていただきたい。

 

 インカやアステカは、じつはスペイン人が入植する以前にすでに内部崩壊をしていたのである。

 

 よってスペイン人による侵略行為とは、そうした中南米の古代国家が滅亡するにあたっての、決定打になったにすぎないのだ。

 

 ではなぜ、そのようなことが明言できるのか?

 

 これはスペイン人がアメリカ大陸にやって来た16 世紀とは、じつは世界中における〈アジア的国家〉が壊滅する時期であったからだ。

 

 これは、くわしくは下記のページを参考にしていただきたい。

 

 

文明法則史学(文明800年周期説)
http://bunmeihousoku.com

 

 

 率直に述べれば、この現象を決定づける運動法則についての科学的解明は、いまだなされていない。

 

 しかし歴史的事実として断言できるのは、人類の歴史とは、800 年ごとに、ほぼきれいに「東洋の時代」と「西洋の時代」が入れ替わっている、という現実である。

 

 そしてなにより、この「文明800年周期説」の原理にしたがうならば、16 世紀とは、東洋の没落と西洋の隆盛が決定的となる時代である。

 

 当時のインカ、アステカといった国家は、もちろんスペイン人の入植以前は、〈アジア的国家〉であった。

 

 なぜなら、そうした国々においては、国民は土俗的な宗教に支配され、国王が“”の化身として君臨し、なお、政教が完全に一致していたからである。

 

 また、この同時代におけるユーラシア大陸を見渡してもアジア的、もしくは中世的な国家群はほぼ消滅し、替わって、多くの〈近代的国家〉が生起しているのだ。

 

 ここからもちろん、スペイン人をはじめとする西洋人が、〈近代〉におこなった悪行が、免責されるわけではない。

 

 しかし時代の法則として、中南米の古代国家滅亡と、それに替る西洋人の興隆は歴史的な必然でもあるのだ。

スペイン人をはじめとする西洋人はなぜ、抵抗なく残虐行為をおこなえたのか

 ここで、疑問がわいてくる。

 

 教派は問わず、ヨーロッパの国々ではみな一様にキリスト教が信仰されている

 

 そしてキリスト教の根幹をなす教えは、〈隣人愛〉である。

 

 そうした教義を信じる、キリスト教徒である西洋人たちはなぜ、アメリカ新大陸をはじめとする異国でこだわりなく、とてつもない蛮行をおこなったか、あるいは、おこなえたか、である。

 

 ここではその暴虐の具体的なあり方は、述べない。

 

 関心のある方は、『インディアスの破壊についての簡潔な報告』(ラス・カサス 著)などを、読んでいただきたい。

 

 まことに近代の西洋人たちは、必要悪としての他民族の虐殺というものを超え、まさに娯楽として、悪逆無道な行為をおこなっていたとしか、考えられないのだ。

 

 この解答を端的に述べれば、その理由とはまさにキリスト教が、〈三位一体〉という概念を包摂している宗教だから、である。

 

 この点は、やや長くなるが、「Kキリスト教における最重要概念、〈三位一体〉とは?」のページ全体を、参考にしていただきたい。

 

 キリスト者にとっては、自分の価値とは〈キリスト〉を経て、”の恩恵に浴しているところにあるとする。

 

 ならば〈〉とは、キリスト〉を知ることにより、はじめて〈〉となる、という論理が成り立つ。

 

 であれば、〈キリスト〉を知らない人間とは人間ではない

 

 〈人〉以下の存在、すなわち獣か悪魔と同等、ということにもなる。

 

 よって、異教徒に対しては何をしても許される

 

 なぜなら、『聖書』においては、獣や悪魔は、これを積極的に抹殺すべし、とあるからだ、となる。

 

 キリスト教徒である西洋人のそうした性質は、早い時期では、11 世紀末に結成された〈十字軍〉の行動にも見てとれる。

 

 十字軍はアラブ世界において、無法のかぎりを尽くした。

 

 それと変わらぬ蛮行が近世・近代のアメリカ大陸やアジア、アフリカ等で展開された、というだけである。

 

 またもう一点、重要なのが、16 世紀に発生した〈宗教改革〉だ。

 

 〈宗教改革〉を境に、そこから生まれた〈プロテスタント〉も、旧来の〈カトリック〉も、“信仰”に、教義の中心を置いた。

 

 そのため、「自分は“信仰”をもっているから、なにをやっても許される」という観念が、キリスト教信者の心に刻み込まれたのだ。

 

 くわしくは、「A“信仰”とは、西洋近現代における最強の〈免罪符〉である」のページを、参考にされたい。

 

 このようにして〈近代〉における西洋人は、なんの恐れもなく、暴虐行為に走れたため、彼らの植民活動は、とどこおりなく進行したのである。

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管理人 水無川 流也