「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

Aプロテスタントの影響と西洋諸国-神秘性と現実主義が混在 Aプロテスタントの影響と西洋諸国-神秘性と現実主義が混在

宗教改革がヨーロッパに広まっていった、過程の概要

 人類史上における最大転換点と呼べる〈宗教改革〉の概要と本質については、このページ以前における 2 つのページで充分述べてので、参考にしていただきたい。

 

 

「A“信仰”とは、西洋近現代における最強の〈免罪符〉である」

 

「A宗教改革の原因、経緯と、その結果との信じがたい隔たり」

 

 

 ここでは、宗教改革がヨーロッパ中に拡がったことによる影響と、その結果、各国でできた社会と体制について述べる。

 

 以下は、その概要である。

 

 

 ドイツの神学者、ルターの主張のもと、それに呼応したドイツの諸侯は、〈プロテスタント〉という会派を新たに興すこととなった。

 

 従来の主流であったカトリックは、当初はプロテスタント勢力を弾圧した。

 

 しかしその後、カトリックは対外政策のためプロテスタントとの妥協を図らざるを得なくなった

 

 その際に、1555 年に〈アウグスブルクの和議〉が成立し、諸侯にはカトリック、プロテスタント両派を選択する権利があたえられるようになった

 

Aプロテスタントの影響と西洋諸国-神秘性と現実主義が混在
アウグスブルクの和議
借用元 http://kh16549.blog.fc2.com/blog-entry-85.html?sp

 

 その後、スイスでフランス人の神学者、〈カルヴァン〉が、ルターの教義をさらに進めた〈予定説〉を説いた。

 

 〈予定説〉とは、端的に述べるならば、個々人の来世における救済は、あらかじめ決まっているとするものである。

 

 またカルヴァンは、本職の司祭が長老をつとめる司教制度を廃止し、教会員のあいだから信仰の厚いものを長老として選ぶ、〈長老主義〉を採用した。

 

 そうしてカルヴァン派、ルター派からなるプロテスタントは、ドイツ、イングランド、北欧などにおいて、主流を占めるようになった。

 

 ところがプロテスタントが普及されていく過程においては、もちろん各国で複雑な葛藤が発生した。

 

 とくにイギリスにおいては、国王であるヘンリー 8 世の離婚問題から改宗運動が始まった

 

 その理由はもちろん、カトリックであるままならば、離婚は許されないからである。

 

 その後における内乱の末、ヘンリー 8 世の娘であるエリザベス 1 世が、1559 年に〈統一法〉により独自のイギリス国教会という体制を確立させた

 

 またカトリックは、イタリア、フランス、スペイン等の、おもにラテン諸国において、多数派を占めていた。

〈予定説〉のもつ意味

 さて、この章ではカルヴァンが唱えた〈予定説〉の意義と、その影響について語る。

 

 まずこの点は、上記「A“信仰”とは、西洋近現代における最強の〈免罪符〉である」のページにおける「人類史上最大の皮肉 “信仰”はついには、〈免罪符〉そのものになる」の章で述べた。

 

 端的には、近現代の西洋人にとって“信仰”とは、そのまま「自分はこの世で、何をやっても赦される」ことを保証する〈免罪符〉そのものとなったのであった。

 

 ならばここも単刀直入に言うならば、カルヴァンの〈予定説〉とは、おもに商業・経済分野における〈免罪符〉になったのである。

 

 この点については、社会学者のマックス・ヴェーヴァーによる『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』などにも、くわしい。

 

 はじめにキリスト教とは、そもそもが個人の蓄財を厳禁する宗教だということは、『新約聖書』等の記述から、明白である。

 

 ところでカルヴァンの〈予定説〉における主張とは、ほぼ以下のようなものである。

 

 

はじめに“”とは、われわれ人間のおよびもつかない、高いところに位置する存在である。そんな“神”からすれば、地上における個々人の死後運命など、〈自由意思〉により、とっくに決めてしまっている。つまり死後、天国に行ける者とそうでない者とはあらかじめ決定されているのである。よって、われわれキリスト教徒は、地上において精一杯、あたえられた職業にいそしむほかない。だから、労働の結果として発生した金銭については、これを私有しても許される。なぜならそれは、「労働の結果」生まれたものであり、決して「金儲け」を目的としたものではないからである。

 

 

 これにより西洋人は、〈近代〉において〈資本主義〉という経済体制を構築し、巨額の富を得る〈免罪符〉を獲得したのである。

 

 また、カルヴァニズムが広まった地域は、スイス、ドイツ、フランス、ネーデルランド(オランダ)、イギリス、北欧諸国等である。

 

 これらの地域は例外なく、〈近代〉において〈資本主義〉というシステムによって財を成している

 

 ここから、近代において、カルヴァニズムが果たした機能は、充分に理解できるであろう。

プロテスタンティズムとは基本的に、ゲルマン民族の原理である

 ところで下記の図を見ていただくとわかるが、プロテスタントがおおいに普及した地域とは、ドイツ、イギリス、オランダ、北欧等、いわゆるゲルマン系の国々が多い。

 

Aプロテスタントの影響と西洋諸国-神秘性と現実主義が混在
16世紀におけるカトリック、プロテスタントの勢力図
借用元 http://www.osaka-c.ed.jp/ed/H17/visual/history/tyusei/skaikaku/where.html

 

 ここから一般に、プロテスタンティズムとはゲルマン民族の論理だということがわかる。

 

 おもに上記地域において、プロテスタントの教えが普及したのは、もちろん政治的、経済的、社会的な要因があったことであろう。

 

 しかしなんと言っても、あるひとつの教義が受け入れられるためには、その地方における住人の性格傾向というものが、重要な要因となってくる。

 

 ならばプロテスタントの教理がそうした国々で生まれ、受容されたのはやはりプロテスタントの戒律が、そこの国民性に適合していたからである。

 

 ではまず、〈ゲルマン民族〉とは、何か?

 

 これは「Eバラ戦争が決定づけた、イングランドとスコットランド」のページにおける、「アングロ・サクソンとケルト、それぞれの民族性形成のあり方」の章を参考にしていただきたい。

 

 そもそも「ゲルマン民族」と呼ばれる人種は、ヨーロッパの先住民族である「ケルト人」とは対照的に、神秘主義的傾向をもつものである。

 

 その理由は、彼らは長い先史時代を、暗い森のなかですごしたため万物の背後に〈霊性〉を見る習性があるからだ。

 

 ところでプロテスタントの論理によれば、“”とは、われわれ人間が住む〈地上〉からは、うかがい知ることのできない高みにいる、となる。

 

 ならばゲルマン系の民族たちには、こうした道理を理解するのは、じつに容易であろう。

 

 なぜならプロテスタンティズムにおいては、われわれが知覚できる森羅万象の本質とは、地上でなく〈に属している、となるからである。

 

 先史時代のゲルマン人たちは、たとえば〈木〉の背後に「その根源としての〈霊〉」の存在を認めた。

 

 それと同様に、近現代のプロテスタント教徒たちは、あらゆる〈現実〉の本性は〉に存在する」と認識したのである。

“神”を極度に抽象化することにより、“神”を無効化したプロテスタント

 ところで、当ページ最初の章で述べたように、プロテスタントの教えが根づいた地域で発生したことは、極度に現実的なことばかりである。

 

 たとえば近現代の経済システムである〈資本主義〉を生んだり、あるいはイギリスでは、国王の離婚問題が原因でプロテスタントが受容された。

 

 極端なまでに「“神”の威」を、高みに押し上げた教義がなぜそのような、現実的・実用的な事柄を生むのか

 

 その理由は、もはや明白である。

 

 プロテスタンティズムは、“”をこの上なくもち上げることにより結果として“”の実質性を、この世から消したのだ。

 

 この点については、再度、前ページの「A“信仰”とは、西洋近現代における最強の〈免罪符〉である」を読んでいただきたい。

 

 そのメカニズムにかんしては、すでにくわしく語った。

 

 こうして〈近代〉の主流イデオロギーとなったプロテスタンティズムだが、これが西洋社会や世界を制圧するようになったのは、むしろ〈近世〉後期である。

 

 近世の初頭においては、スペイン、ポルトガル等のカトリック国がヨーロッパを主導していた

 

 では当時のカトリック教会やカトリック諸国では、何が起こっていたのか?

 

 またなぜ、その時代におけるカトリックは、強い影響力をもち得たのか?

 

 この点については、次のページで詳細に述べる。

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管理人 水無川 流也