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Bなぜ近世にプロテスタントはカトリックを、逆転できたのか Bなぜ近世にプロテスタントはカトリックを、逆転できたのか

カトリックの社会体制における問題点

 このページは基本的に、前ページ、「Bオランダの独立とイギリスの進出-なぜ新教時代は花開いたか」の続編である。

 

 当ページタイトルにあるように、プロテスタント諸国とカトリック国家は17 世紀の初頭あたりで、それまでの力関係が変わっている

 

 その時点までに、ヨーロッパを牽引していたスペインやポルトガルはすっかりと勢いを失った

 

 その理由は、前ページや、「B「日の沈まぬ国」スペインの、繁栄と没落の原因は同一」や、「B西洋が大航海時代に入った究極要因−寒冷化、肉食、香辛料」のページの最終章、「ポルトガル衰退の理由」等で述べたとおりである。

 

 端的に述べれば、カトリック諸国は、〈レコンキスタ〉という、イベリア半島からイスラム勢力をなぎ払う勢いのまま、海外進出を成功させた。

 

 ところが自国内の権力機構、および社会のあり方はいまだ〈中世〉から抜け切れていなかった

 

 よって、ポルトガル、スペインは近世社会には、対応できなくなったのである。

 

 ここを具体的に述べれば、カトリック諸国は大国家事業として、海外進出や商行為をおこなった。

 

 ところがこうしたやり方では、国民のヤル気を引き出すまでには、至らなかったのだ。

 

 なぜならカトリック諸国では、もし商人が貿易により利潤を得てもそれは教会へと没収されるのである。

 

 またその“教会”にしたところで、スペイン、ポルトガルの国内にいる住民は、カトリック信者だけではない。

 

 〈レコンキスタ〉の後もイベリア半島に残ったイスラム教徒、ユダヤ人、異邦人なども存在する

 

 そんな彼らに向かって、「カトリック教会のために、働け」などと言っても、まったく意味はない。

 

 むしろスペインなどでは、国内にいる多民族を統合するイデオロギー、神話が欠如していた

 

 よって国内は、ずっと内乱状態にあったのだ。

「市民のための教義」が浸透していた、オランダ、イギリス

 さて、では一方のプロテスタント諸国、オランダやイギリスは、どうだったのであろうか?

 

 こちらは、カルヴァン派や、カルヴァン派をもとに創出された〈イギリス国教会〉の教えが拡がっていた。

 

 またそれゆえに、国内はそうしたイデオロギーでもってある程度は統一されていたのである。

 

 その教義とは、有名なカルヴァン派の、〈予定説〉だ。

 

 これは、「Aプロテスタントの影響と西洋諸国-神秘性と現実主義が混在」のページにおける、「〈予定説〉のもつ意味」の章を、参考にしていただきたい。

 

 要は、プロテスタントであるオランダやイギリスのブルジョワジーは、こう割り切っていた。

 

 

「キリスト教における旧い教えでは、“金儲け”は、たしかに悪であった。しかし、あくまで“金儲け”そのものを目的とせず、懸命に働いた結果としての蓄財なら許されるのだ」。

 

 

 この教理のおかげで、新教徒であるブルジョワジーたちは堂々と商行為に没入できた

 

 またその結果、築いた財は、もちろん税以外では、自分のものにできた。

 

 そのため、オランダやイギリスの商人は、じつに巧妙かつ大胆に、ヨーロッパや世界中の市場で、荒稼ぎができたのだ。

 

 それが結果として、本国の財政も豊かにしたため近世のオランダやイギリスは、繁栄したのである。

〈国民国家〉、および〈ナショナリズム〉という概念の浸透

 またもう一点重要なことは、当時のオランダ、イギリスには、〈国民国家〉、および〈ナショナリズム〉という観念が行き渡っていたことが挙げられる。

 

 こうした意識は、〈近代国家〉を形成するにあたり、重要なものである。

 

 なぜなら近代国家とは、「一国・一民族」という前提で運営されているからだ。

 

 その民族をなす、一人ひとりの国民が「国家という共同体」に対して帰属意識をもつことにより、近代国家は成立する

 

 この点で述べれば、まずオランダはスペインからほぼ自力で独立を果たした結果連邦の国民たちは、一体感をもった

 

 それにより、「自国を護り、かつ富ませるため」、市民たちはますます労働にはげむのである。

 

 またもう一方のイギリスであるが、こちらはたいへんに旧い時期から、議会が存在していたことは、前のページの最終章、「なぜイギリスは早期に、強力な議会と中央集権王制を確立できたのか」で語った。

 

 つまりイギリスでは市民が、「政治に参加する」ということが、早くからおこなわれていたのだ。

 

 よって当然に、市民たちのあいだでは、「自国を運営するのは、自分たち」という意識が、長く存在していた。

 

 これはつまりは、国家への帰属意識であり、〈ナショナリズム〉である。

 

 このように、当時のオランダやイギリスなどの新教国では社会制度上も、観念上も、〈近代化〉がなされていたのだ。

 

 よって、こうした国々が「新たな〈近代国家〉」として、時代を牽引していくのは、きわめて当然のことである。

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管理人 水無川 流也