「何が」ではなく「なぜ」を、「歴史用語の多さ」ではなく「その関係性」を大切に。

B西洋が大航海時代に入った究極要因−寒冷化、肉食、香辛料 B西洋が大航海時代に入った究極要因−寒冷化、肉食、香辛料

ヨーロッパ人はなぜ、大航海時代に突入したか? もっとも根本的な理由

 中学校や高校などにおける世界史の授業では、西洋社会が中世末期から〈大航海時代〉に突入した原因として、“香辛料”の存在がメインだとしている。

 

 西洋人は基本的に肉食民族なので、その肉を防腐するため、または調理における味つけのためコショウをはじめとする香辛料の需要が拡がった

 

 その結果として、ヨーロッパの国々は香辛料を求め南方の地域を目指した、とするものである。

 

 この説明は、いちおう理にかなっているし、また事実でもある。

 

 しかしこの説からは、なぜ中世末期の時期になり香辛料がつよく求められるようになったかは、わからない。

 

 なぜなら、西洋人が肉を主食としていたというのは、それ以前の何百年も前からのことだったからである。

 

 この点から言えることは、この時代になり、ヨーロッパにおいて、香辛料の必要性が最大なものになったとということだ。

〈寒冷化〉により、農作物の不足が引き起こされた

 では、その根拠とは何か?

 

 これは解答だけ述べれば、〈寒冷化〉である。

 

 まず下記の、地球の気温を表わしたグラフを見ていただきたい。

 

B西洋が大航海時代に入った究極要因−寒冷化、肉食、香辛料
各時代における、地球の気温変化を表すグラフ
借用元 http://ichijin.seesaa.net/article/390389887.html

 

 1200 年代半ば以降気温がどんどんと低下しているのがわかる。

 

 これにより、ヨーロッパでは、中世において発達した〈荘園〉から獲得できる農作物が減少した

 

 よってそうした理由から、西洋人は放牧しておくだけで食べられる牛やブタなどの家畜を必要としたのである。

 

 そこからヨーロッパでは肉食が発達しその結果、香辛料がつよく求められるようになった。

 

 それにくわえ、本国以外の地域における農作地が必要となった。

 

 よって当時の西洋人は、ヨーロッパ以上に暖かく農耕が可能な土地を求めていたのである。

 

 これが、大航海時代の真相である。

 

 しかしこれはあくまで主体的条件であり、南方諸国におもむくためには、海運技術力や地理の知識等、客体的条件が満たされる必要がある。

 

 では西洋人は、そのハードルをどのように克服したか。

 

 その過程を、述べていく。

大航海時代の端緒

 中世のヨーロッパではもともと、イスラム勢力をはじめとする東洋の国々に圧倒されていたため、人々にはアジア地域への強い憧憬があった。

 

 そうしたなかで中世後期には、中国から伝わった羅針盤の改造快速帆船の普及等、遠洋航海に関する技術革新が起こった。

 

 さらには13 世紀ごろより、イスラム商人やローマ教皇が東方に送った使者の影響によりヨーロッパではアジア地域における地理の知識が伝えられた

 

 これにより、西洋人が海外へ進出する条件は整ったのである。

 

 くわえてこれには、香辛料の獲得の他に、世界地域へのキリスト教布教という欲求も加わり、人々の非西洋世界に対する憧れはさらに高まった。

 

 15 世紀のポルトガルでは、「航海王子」こと〈エンリケ〉が海外への事業を展開した。

 

B西洋が大航海時代に入った究極要因−寒冷化、肉食、香辛料
「航海王子」こと、エンリケ
借用元 http://taleofpirates.info/henrique.html

 

 その流れを受け、1488 年バルトロメウ=ディアスが、アフリカ南端の希望峰へ到達した。

 

 および 1498 年には、ヴァスコ=ダ=ガマが、インド西岸のカリカットに到達し、香辛料を入手した

 

B西洋が大航海時代に入った究極要因−寒冷化、肉食、香辛料
大航海時代における、ポルトガル人の航路
借用元 http://homepage3.nifty.com/ryuota/earth/history14.html

 

 香辛料獲得は、ポルトガルの国家事業としておこなわれこれによりポルトガルはおおいに栄え、首都リスボンは、世界商業の中心地ともなった

なぜ、ポルトガルか

 ではなぜ、ポルトガルはヨーロッパ他国に先んじて、大航海時代を実現できたのであろうか?

 

 これには、以下の理由が考えられる。

 

 まずポルトガルはスペインとともに、「〈レコンキスタ〉=国土回復運動」を、中世をつうじて経験した

 

 この詳細については、前ページの「Bレコンキスタ-大航海時代に内部爆発する、西洋世界の原点」を、参考にしていただきたい。

 

 そうしてイスラム勢力を、イベリア半島から駆逐したエネルギーがそのまま外洋へと向かったのである。

 

 次に、ではなぜポルトガルはスペインとおなじく、〈レコンキスタ〉をなしたのに、スペインより先行できたのか?

 

 これにはまず、時間的な問題として、ポルトガルはスペインより早く、国家が成立したから、というものがある。

 

 ポルトガル王国の成立は、1143 年であるが、スペインは1479 年だ。

 

 さらに地理上の条件として、ポルトガルはヨーロッパの西端に位置し国全体が大西洋に面している

 

 よってもちろん、これは大西洋からアフリカ、インド洋へと航海するのには有利である

 

 最後に、一部上述したように、ポルトガルの海外遠征は大規模な国家事業としてなされた。

 

 そのうえなお、ポルトガルはローマ教皇の支持を受けていたのである。

 

 こうした前提が重なり、ポルトガルは大航海時代の先鞭をつけられたのである。

ポルトガル衰退の理由

 ところが、それだけ先進的だったポルトガルも、16 世紀後半にはじょじょに衰退していく

 

 その理由も、数多く存在する。

 

 まずは遠征の結果、獲得した領土や富が、国力以上のものであったためこれを制御できなかったのである。

 

 またポルトガルは後に、その国力や国土の貧弱さのため、スペインに一時、併合された

 

 さらにその後ポルトガルは、第二次産業の生産力が弱かったため工業力に勝るイギリスの従属化に置かれた

 

 そうしたなかにあっても、ポルトガルは国内で、貴族と聖職者が権力争いをしており、国内の統治さえ、危うくなった

 

 こうしてポルトガルは、後から来たスペインやイギリスの後塵を拝するようになったのである。

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管理人 水無川 流也